第30章 White November ーデイダラ、角都ー
「暗号じゃねぇスよ。こんなん、只の腐し合い…おぉ…?今腹鳴らしたの長老?腹減ってんですか」
「うむ…昼に回そうと朝飯をケチり過ぎた。今頃皆早くも飢えているかも知れん。お前はどうだ、デイダラ」
「や…オイラ元々朝は食うより寝ててぇ方だから別に何て事ねぇけど」
「そうか。ならまあいいな」
「いやいやいや、よかねぇだろ?皆色々苦労してんだからよ。飯くらいちゃんと食わせてやれ?うん?」
「武士は食わねど高楊枝!欲しがりません勝つまでは!」
「何を勝手な…ひとりでやれよ、横井庄一さんみたく」
「いや、アレで彼は現地民にエラい迷惑をかけ続けていたんだぞ?近所の森で独りで戦争してるヤツから敵認識されながら何十年も暮らし続ける事になったらどうだ?キツくないか?迷惑じゃないのか?何せ統合本部も司令機関もないからな。独断で無作為にいきなり襲って来るんだぞ?悪気もなしに!頑張って!衝撃のロンリーゲリラが数十年!互いに段々年もとる!体がきかなくなる!面倒臭くなる!どうだ。やり辛いだろう?違うか」
「…そういうケースは考えた事ねぇし、考えたくもねぇな…」
「飛段やリーダーのようなタイプが嵌りがちな沼だ。気を付けてやらねばなるまい」
「あははははは!」
「うるせぇ!笑ってんじゃねぇぞ、汐田!角都、オメェ何しに来たんだ?うん?」
「腹が減ったから気晴らしの散歩だ。もしかしたら食えるモノが落ちているかも知れんだろう」
「雪でも食ってろ、ボケ爺」
「馬鹿を言うな。実際チョコが落ちていたじゃないか。雪とチョコではカロリーが段違い、目覚ましい収穫だ」
「ば、こりゃオメェのじゃねぇ…」
「いいスよ。一個あげますよ。かわりに昼飯はアタシが作っていいスかね?ちっと早目にブランチみたくさ」
「材料に限りがある」
「あー、いい、いい。コイツに買い出しに行かせマスから」
「…コイツってドイツだよ?オイラの事か?うん?」
「他に誰がいんだよ?パシれ。若ェんだからよ。いい?長老」
「金はないぞ」
「あー、いい、いい。コイツに出させマスから」
「…おい、汐田。いよいよコイツって誰の事だ?ぜってぇ出さねぇぞ、オイラは」
「必ず出すんだよ、オメェが!考えてみりゃオメェ、バレンタインのお返しくれてねぇじゃねぇか!オメェ名義の遺産譲渡の書類に判押した覚えがねえぞ、コラ」