第30章 White November ーデイダラ、角都ー
「そう言えば俺も覚えがないな…」
「…どさくさ紛れに何言い出してんだ、この和製シャイロックは…。角都、オメェはマジちょっと黙ってろ、うん」
「そうデスよー。いくら長老でも遺産は譲れねぇなぁ」
「オメェにも譲んねぇよ、バカ!大体何処の間抜けがバレンタインのお返しに遺産分けするってんだ!ありえねぇだろ!?うん!?二人して生臭ぇ夢みてんじゃねえ!」
「うるせぇなー。どっちにしろ人にくれてやんだけの財産なんかねぇっつってたじゃねえかよ。しょーもねぇ」
「財産はねぇ!けどお返しは…ッ」
どプスぴッ
「…あ?」
「…うん?」
「…おい。チョコ食った長老が鼻と耳と口から煙吐いて動かなくなったぞ?」
「ん?うん?どうしたんだろな、うん」
「…おい、デイダラ」
「…うん?」
「これ、オメェの手作りか?」
「うん?あー、まあ、渡す機会がなくて遅くなっちまったけど、お返しな。一応」
「スゲー一応だな。長老、ハウルの動く城みてぇになってっぞ?」
「いや、オイラらしさを盛り込んだら、こんな素敵なチョコになった、みたいな?…うん…」
「なーる程。コレをアタシに食わせる気だったと?そゆ事デスね?」
「あー、まあ、そゆ事になっかな?でもよ、三月に作ったチョコだぞ?時効じゃねえか?うん?」
「尚悪い事くらいわかるよね、デイダラくん?三月に作った?今十一月だぞ?時効じゃなくて賞味期限について話し合うべきじゃねぇかなぁ」
「…かな?うん」
「しかもデスよ?中に何を仕込みやがりましたか?」
「弾ける真心を仕込んでみました。うん。ハハハ…」
「おいコラ」
「うん?」
デイダラの肩に手を回して、藻裾が物凄く悪い顔で笑った。
「…来年のバレンタイン。色々楽しみにしてやがれよ、この野郎」
「…うわぁ…」
どっと払い。