第4章 これで萎えない鬼鮫は凄いー鬼鮫ー
牡蠣殻は鬼鮫の胸に自ら収まった。背中に手を回して体を寄せる。
鬼鮫は手を浮かせて瞠目した。
「忘れていました。あなた、マルキ・ド・サドをお読みでしたね」
「おや、思い出されましたか。では立ち入った疑問も氷解されたのでは?」
「相手が気になるところですね」
再び薄い背中に手を回して、鬼鮫が牡蠣殻を押し倒す。
「まだ言いますか。今側にいるのは誰です?他に何か要りますか?」
牡蠣殻は鬼鮫の肘をとって、簡単に上下を反した。鬼鮫は口角を上げた。
「磯の人間は強くはないが厄介だ。小技に長けている。・・・あなたの性嗜好が加虐的で劇場型とは意外ですね」
「何とでも。厭なら言いなさい?止めますよ?」
柳の葉のように細められた牡蠣殻の瞳の中で、黒目が膨らんでいるのが見てとれた。アドレナリンが放出されているのか、猫のようだ。
「フ。完全にスイッチが入ってますね?・・・面白い。事が終わった後のあなたが見物だ。さぞ可愛らしいでしょうねえ」
牡蠣殻の首に手をかけて抱きよせ、その首筋に顔を埋める。
二人は寝台に縺れ込んだ。