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閑話休題?ーNARUTOー

第27章 磯 其の四


この草食系男子め。

「魚なら磯辺が何時だって私の好みのものを手に入れてくれますからね。鯛でも鮃でも鱸でも」

ツンと顎を上げて言えば、波平は盛大に顔をしかめた。

「磯辺をいいように使うのは止めて下さい。あれはあなたの侍従ではありません」

「探索方の任を解かれて暇を持て余しているんだもの。磯辺だって気晴らしになると言っていたわ。海魚を買い出しに出るくらい何でもないじゃない。あのコは功者なんだし、何処にだって行けるでしょ」

「だからその功者たる磯辺を私物化して使い走るのは止めて欲しいと言っているのです。磯辺は魚屋じゃないんですよ」

「磯辺が魚屋?何言ってるの、失礼な子ね。大体私と磯辺の事にあなたが差し出口する筋合いがあって?」

「ならば深水先生に叱って頂きましょう。先生が知ったら何と言うか…」

「そんな事をしても叱られるのは磯辺よ。先生が私に怒る訳ないもの」

櫻貝を思わせる淡色の爪を撫でながら、私は行儀悪く鼻を鳴らした。
こんな真似は波平の前でしかしない。
私の化けの皮は猫どころか羆の嵩だ。何しろ私は磯の天女だから、簡単に馬脚を現す訳にはいかない。
そうね、天女だけに化けの皮は相応しくない。羽衣。羽衣ね。羆の嵩ある美しい目眩し。

山の草樹の煩わしい匂いが、弛い風に乗ってムッと鼻に纏わりつく。

本当に何時までこんな暮らしをしなくてはならないのかしら。

長く続いた大戦の最中、小里の磯は息を潜めるように戦況をやり過ごして来た。元から決して強い里ではない磯の事、そのまま大過なく終戦の暁を見るかに思われていたのに、磯影たる父破波は在郷する暮らしを捨てた。
大国が磯の薬事の技と、その民の持つ失せる力に目をつけたから。
戦に巻き込まれる事を嫌い、磯人は住居を定めず里ごと彷徨き回る浮浪の民に成り果てた。

情けない。

「…悪い顔になっていますよ。何を考えてるんですか」

「何だっていいでしょ。もう、いつまでも側にいてうだうだ言ってないでどっかに行きなさいよ。それこそ磯辺に会いにでも行ったら?あなた、もうすぐ木の葉のアカデミーに行くんでしょう?そしたら今みたいに磯辺とも会えなくなってよ。せいぜい通って唾をつけとくがいいわ」

イライラと言い放つと、波平はいっそ情けない顔をした。
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