第24章 Deep trouble valentine.ーデイダラー
「バカツキじゃねえ!アキャツ…アカ、アカチュ…、あ、あかか、暁だ!暁!!!」
「だはははははははは!どんだけ噛んでんだ、オメェはよ!だ、はは、ははははははは!アキャツキ!アカチュキ!ぎゃはははははははは!」
「…オメェが誰にチョコやる気で浮かれてんだか知らねえが、オイラァそいつに心から同情する。こんな壊れたジョッコーモンキーみたようなヤツに貰うチョコなんか間違いなく地獄の一丁目への片道切符だ。そいつはきっと三月を待たずに死ぬな。うん。可哀想にな、我愛羅」
「うん?オメェ今月中に死ぬのか?」
「……うん?」
「何だよ、じゃお返しは二月中に頼むぞ?葬式饅頭は景気良くデッカイのにしろよな!」
藻裾が袂から出した小さな箱をデイダラの頭にチョンと載せる。
「……うん?」
目を瞬かせたデイダラに指を突き立てて、藻裾は偉そうに仰け反った。
「いいか。死ぬ前にちゃんとお返ししろよ?どうせ死ぬんならすンげー張り込め。何なら遺言状に全財産アタシに譲るってのでも…いや。ちょっと待てオメェ、財産なンかあンのか?」
「……あー、ねえなぁ、うん」
「何だよ、やっぱオケラか!まあいいや。兎に角楽しみにしてっからな!」
賑やかに言い放つと、藻裾は後も見ずに立ち去った。
デイダラは頭に小箱を載せたまま、魂抜けた顔で固まったまま暫し。
「あれ、デイダラさん?どうしました?頭が何か変ですよ」
どれだけそうしていたのか、声をかけられてハッと我に返ると、牡蠣殻が酒臭い湯気の立つ酒器を手に訝しげにしているのが目に入った。
酒器を抱えた牡蠣殻は、首を傾げてデイダラの頭をじっと見る。
「髪飾りですか?斬新ですねえ…」
「や、違う。これは…てか、酒臭ェぞ、何だそれ、うん?」
鼻を摘んで酒器を指差したデイダラに、牡蠣殻はにっこりした。
「バレンタインですからね。鰍の骨酒です」
「あー、道理で何となくグルタミン酸……。……うん?…バレンタインだから鰍の骨酒…?昼間から?うん?」
「そうですよ。バレンタインなので鰍の骨酒です。何時までも火の気のない広間に居ると風邪をひきますよ?気を付けて下さい」
当たり前の様に頷いてから小箱とデイダラを不思議そうに見比べ、牡蠣殻は旨味成分と酒精の香りを残して広間を出て行った。
「……いいのか、鬼鮫はあんなんで?うん?」