第24章 Deep trouble valentine.ーデイダラー
呟いたところで誰かに肩をどやされた。頭から小箱がずり落ちて、デイダラはアタフタとそれを手に受け止める。
「なッ、誰だゴラァ!?」
「ぃよーう、男前ェ!頭にプレゼントなんか載っけて何だ、テメェ!チョコか?チョコだろ!いいなぁ、おいィ!」
「止めろバカ!うん!?」
ずしと頭が重くなって、のしかかって来た何者かを振り払って目を三角にすると飛段がいた。
ニヤニヤしながら腕組みして、デイダラの手にある小箱をじろじろ見ている。
「ちっこいねえちゃんに貰ったか?バレンタインだもんなあ!げはははは!」
「オメェに関係ねえだろ。うるせんだよ。あっち行け」
「んー、何か小腹が減っちまってよ。おやつの時間だろ、丁度ォ」
じいっとデイダラの手元を凝視しながら物欲しげに言う飛段から小箱を隠し、デイダラはぐっと口角を下げた。
「おやつが欲しきゃ女ンとこへ行けよ、うん?」
「ざーんねん。約束は夜なの!大人だかんね、俺ァ」
「なら小腹くらい夜まで我慢しろよ。大人なんだろ?それくれェ屁でもねえだろ、うん。バレンタインなんだからよ、今日は」
「あららららぁ?何だよ、独り占めかよ、デイダラァ?」
「バカ、もしかしたらスゲー危険物かも知んねえんだぞ、こりゃ」
あ、そうだ。そうに違いない。そう考えりゃ納得だ、うん。
デイダラは確信に満ちた顔で飛段を見、にやりと笑って続けた。
「お楽しみに出かけらんなくなっても知らねえぞ?それでも良けりゃ食えよ、ホラ」
打って変わって小箱をズイと差し出したデイダラに、飛段はにやりと笑い返した。
「ばぁか。誰が人ン貰ったチョコなんか食うかよ。んな野暮な真似ァしねんだよ、俺ァよ。貰ったモンはちゃんと手前で食えよ?あ?」
べちんとデイダラの頭を叩いて、飛段は腹を掻きながら厨の方へ消えた。
残されたデイダラは小箱を手に途方に暮れて突っ立った。
「…何なんだ、一体……。…どうすんだ、コレ…?うん?」
開けて見た小箱の中身が至極普通の小さなチョコだった為に、この後デイダラのバレンタインは無意義に悩み深く過ぎ暮れて行く事になる。
お気の毒様。
どっと払い。