第23章 クリスマスにならない(ぐだぐだ)ー暁ー
「いやぁー…バカはオメェだ。大丈夫か?何でそんな笑ってんだ?別に面白かねぇぞ」
「この可愛いオッサンにゃ年頃の女の子と同じスイッチがついてんスよ」
「箸が転がっても笑っちゃうんだよな、旦那は。こう見えて案外乙女なんだぞ。気色悪ィよな、うん」
盆の窪に手を当てて訝しむ飛段に藻裾とデイダラが応じて、小南とポインセチアの鉢を何処に置くか話していた牡蠣殻がサソリに殴られた。
「ち、ちょっと何ですか!?何でまた私!?何この風が吹けば桶屋が儲かる方式の流れ!?私全然関係ないでしょう!?」
「うるせぇ。競馬なんかで勝ちやがって、皆テメェが悪ィ。何がクリスマスだこのクソ髷眼鏡。大体俺ァ呑み食い出来ねんだってのに、ちっとも面白かねんだよ、パーティなんかよ!」
「呑み食いしたらどうなるんです?」
「錆びて壊れるわ!」
「おお!じゃ是非呑み食いして下さいよ。寒北斗で人造人間に乾杯しましょうよ。弥栄!ぶッ」
サソリの振りかぶった新巻鮭に顔面を打たれて、牡蠣殻が顔を押さえる。
「人造人間って何だ!?俺の事か!?」
「いったァ…、ヒドイな。生臭いじゃないですか」
「黙れ!何が弥栄だ、バカッ!どんだけ俺が嫌いなんだテメェは!」
「貴方が私を嫌ってる程度には嫌いですよ、勿論」
「…そりゃ相当だな…」
「ええ?相当なんですか。そりゃお互い困りましたねえ…」
「牡蠣殻さん」
鬼鮫に声をかけられて牡蠣殻は振り向いた。腕組みした鬼鮫が渋い顔をしている。
「一体何です、これは」
牡蠣殻はきょとんとして藻裾と顔を見合わせた。
「競馬で儲けたので」
「大盤振る舞いするんスよ」
「お世話になった方にお礼をしようと」
「毎年恒例ですよ。この人、年に一回だけ賭け事するんスけど、何か必ず大儲けするから」
「今までは磯でやってましたが」
「去年は兎も角、一昨年は磯の長老連とこいこいやって河豚」
「流石に賭け事の為に他出出来ませんから、自然手近で懐豊かな山っ気のある人が相手になります」
「その前はチンチロリンで前沢牛。毎年一人勝ちしてどんどん長老連に嫌われちゃって」
「そういう訳で今年は皆さんにお礼申し上げようかと思ったのですが」
「嫌ならいんだよ。長老と三人でやるから」
「角都さんも勝ちましたからね。一緒にお祝いしましょう」
「牡蠣殻さんよか儲けたよな」