第23章 クリスマスにならない(ぐだぐだ)ー暁ー
「…競馬なんかやるのか、牡蠣殻」
ペインがポカンとして鬼鮫を見た。
「知ってた?」
「…何で私に聞くんです?」
にべもなく返されて今度はサソリを見る。
「え?あ、じゃ、知ってた?」
「何で俺に聞くんだよ!?知らねェよ、バ牡蠣殻が銀だこ食おうが梅屋行こうが!」
「いえいえ、スタンド地下で焼きそば買って、ながらビールですよ」
紙袋から色々取り出しながら、牡蠣殻はにこやかに答える。
「テメ…」
「おい、おいおいィ!」
何か言おうと口を開きかけたサソリを押さえて能天気な声が割り込んで来た。
「だっは、あ、そおォ。ハハァ、何だァ牡蠣殻ァ、一声かけろよォ。そんなら明日一緒ン有馬に行こうゼ、どうだ、あ?」
飛段が体を起こして牡蠣殻の肩を叩く。
「クリスマスよか盛り上がるわ。いやもう、競馬好きなら早く言えって!」
額をパチンと叩いて、ガクガクと牡蠣殻を揺さぶる。
「ひ、飛段さんも競馬を嗜まれるる、ん、ですねね、えぇ…ァだッ」
揺さぶられながらブレブレに答えた牡蠣殻の頭が色味の悪い手で叩かれた。
「……干柿さん?」
「何です?」
腕を組んで立ちはだかる鬼鮫に、牡蠣殻はフッと鼻を鳴らす。
「私が勝ったからってお僻みになられてるんですか?知りませんよ。ちゃんとお誘いしたじゃないですか。行かないって言ったのは貴方なんですからね?逆恨みしないで下さいよブベッ」
延髄に水平チョップを食らって牡蠣殻の頭が飛段の喉仏に激突する。
「がはッ、っつ、テ、テメェ鬼さ…ゲハっ、ゴホ…ッ、何しやがる!」
「あなたには何もしてませんよ」
「ゴホ…ッ、ん…?ゲホッゲハッ、そういやそうか?ゲハッ」
「ぃいった、頭いったァ!喉仏、刺さ…ッ、か、硬い!思いの外硬い、喉仏!いっちぃー…」
騒ぐ飛段と牡蠣殻の傍らでデイダラと藻裾がゴソゴソと袋を空にしている。
「…おい、クリスマスに新巻鮭って何考えてんだ、オメェらは?うん?磯じゃクリスマスに鮭食うのか?」
「バッカ、そりゃ正月用だ。雑煮に使うんだよ」
「何だ、正月までいんのか?縁起悪ィな、おい」
「なーに言ってんだ。オメェのチョンチョコリンで書き初めすんのが今回の目的だから。正月までいねえでどうすんですよ」
「…待て。ずっと言いそびれてたがオイラん髷は筆じゃねえぞ、うん」
「またまた。またまたまた」