第23章 クリスマスにならない(ぐだぐだ)ー暁ー
「得体の知れねェ親父じゃねえよ。赤いステテコに赤い婆シャツ着て、赤い野球帽被った三太さんだ。髭ぼうぼうで、三百六十四日は引き篭もってる子供好きのおっさんだよ」
「スゲェ精度でまンま変質者じゃねえか!!警察呼ぶぞ!?」
「いいヤツなんだぞ?」
「知るか!滅茶苦茶おっかねえ!三太の話はもう止めろ!都市伝説か、それ!?」
「何言ってやがる。本当にあった怖い話だ、バカ」
「止しなさい、汐田さん。デイダラさん、安心して下さい。三太さんにも貴方同様選ぶ権利がありますからね。ここにはまずお見えにならないと思いますよ」
周りを見回してフと鬼鮫と目を合わせた牡蠣殻が、真顔で深く深く頷いた。
鬼鮫はあまり穏やかでない顔で口角を上げながら、また指でトンと卓を鳴らした。
「……何ですか?」
「いいえ、何でもありません。デイダラさん、お時間おありならお手伝い頂けますか?」
剣呑な鬼鮫から目を反らし、牡蠣殻はデイダラに顔を振り向けて片手で拝む仕草をした。
「…三太はなしだぞ、うん?」
むっつり答えたデイダラに藻裾が呆れ顔をする、
「そんなんある訳ねえじゃん、バッカだな、ドデンダラはよ。何だ三太って。受けるわ。ハハハッ」
「……イモ裾テメェ、ホンット夜道には気を付けろよ?いやもう真っ昼間の繁華街でも気ィ抜くな?オメェ、あっちこっちで要らねえ恨み辛みを買いたい放題衝動買いしてっぞ、絶対。うん」
「アタシは無駄遣いはしません〜。必要なモン以外誰が買うか。アタシの稼いだ金はアタシの血肉だぞ?無駄遣いなんか絶対しねェ」
「…何そんなンと握手してんだよ、うん?角都…」
「何だかんだ言って楽しそうじゃねぇか。いいなぁ、デイダラァ。彼女がいてよ」
「ばッ、この馬鹿飛段!オイラにも選ぶ権利があるって何回言えばッ」
「あー、はいはい、怒んな怒んな。悪かったよ」
頭の後ろで手を組んで、飛段が行儀悪く卓に足を載せた。その足が藻裾が置いた紙袋にぶつかって、ガサガサと様々な食材が卓に溢れる。
「?何?本当に何かやるの?豪勢ね」
小南が如何にもクリスマスらしい食材の山を見て目をぱちくりさせた。
「師走ステークスで万馬券こそ出ませんでしたが三連単勝ちまして」
足元の包みからケーキの箱を取り出して牡蠣殻がにっこりした。
「今私、あぶく銭で懐がはち切れそうなのです」