第22章 厄介な誕生日
「ギャー!!!怖い、この人怖い!!!たぁすぅけぇてえェェ!!!」
「誰も来やしませんよ。根回しに半月かけましたからね」
「な、何やってんですか、アンタは!?私の誕生日を何と心得る!?」
「そうですねぇ。そう言えば私はあなたを何と心得ているんでしょうねえ」
「し、知りませんよ!ぅえ…ッ、ちょ、感極まって吐き気が……」
「そんなに嬉しいんですか。今日は随分素直ですねえ。可愛くて仕方ない……」
「かあァァァ!痒い!止めて!干柿さん、謝ります!謝るから止めて下さい!ゴメンなさい!うえッ」
「…何でえづかなきゃないんです?どういうシステムになってるんですか、あなたの体は」
「それがわかれば苦労しません」
「苦労してるんですか?かけてるんではなく?」
「……そこは華麗にスルーして下さいよ…」
「……楽しいですねえ、牡蠣殻さん?」
「……わあ…。今日はもうずっとそんな感じで行く気なんですね?諦めなきゃいけないんですか?諦めなきゃいけ…諦め…あきら…諦めるモンかあァァ、痒いんだよ、バカァァァ!!!」
「暴れないでくれませんかねえ、抱き締めて欲しいんですか?」
「こんな干柿さんヤだァ!!!」
「凄いですねえ。小南さんの忠告通りですよ」
「何だって!?小南さん!?魚は魚でも今日の貴方は人魚姫ですか!?バースデースペシャル!?要らない!要らないよ!そんなスペシャリティ!!!魔女に鰓でも売り飛ばしちゃった!?後で困りますよ!?貴方鮫なんだから!!」
「…胡南さんに言い付けますよ?」
「ごめんなさい。もうしません」
「面白いくらい効いてますね。流石は小南さんです」
「聞くのも厭ですが好奇心には勝てません。一体どういう忠告を頂いたんですか?」
「飴と鞭の使い分けと、天邪鬼な者への対処法ですよ」
「他人の実体験と極めて主観的な検分が効いてしまっている自分に腹が立つ」
「言い付けますよ」
「ごめんなさい」
「わかればいいんです。さあ、楽しい一日を過ごしますよ。私としてもこのテンションがいつまで保つか全く自信がありませんからね。私の辛抱が切れた際には反動であなたに大層辛抱を強いる事になるでしょうがそこは仕方ありません。何しろ今日はあなたの誕生日なんですからね」
「…言いたかないですが、産まれて来なきゃ良かったかも知れないと魔が差しましたよ、今」