第22章 厄介な誕生日
「よくある事ですよ。誕生日おめでとうございます、牡蠣殻さん」
「……ありがとうございます…」
「厭な顔しないで下さいよ。堪らない」
「…うわぁ……」
限りなく八の字、果てしなく八の字。情けない眉をして鬼鮫の腕の中で牡蠣殻が頭を垂れる。
「…そんなに厭がられるとますますヒートアップしますねえ……」
「泣いちゃおうかな。いいですか?」
「駄目です。さあ、部屋に着きましたよ。長い一日になりそうですね、牡蠣殻さん。何せ寝かせる気がないですからね」
「寝てないんですよ」
「知ってますよ。だからこそ今日は一日あなたの無駄口に付き合いましょう。楽しいですねえ、牡蠣殻さん」
「…何で誕生日に拷問を受けなきゃならないのですか」
「好きだからじゃないですか」
「は?」
「好きだからですよ」
「…あの…」
「それともあなたは嫌いですか?私が」
「…いいえ」
「でしょう?」
仕舞い込んでしまいたい。捕まえて逃したくない。
そういう相手が生まれた日。
何処へ行こうと会いたくなる。気が付くと恋しがる自分がいる。
そういう相手に巡り会えた道筋の初めの日。
Happybirthday,with all of my hearts.