第22章 厄介な誕生日
「ほう。では早速捻り潰しましょうか」
「いやいやいや、何でそうなるんです。素面の私は駄目なんですか?ありのままじゃ駄目ですか。成る程、私、お姫様でも美人さんでもありませんもんね。わかりました。実は酔っています。凄く酔ってます。ええ、もう泥酔状態です」
「……」
「何か?」
「何もかにも、今その果てしない酔いを醒まして差し上げますよ。さあ、どこを削りますか?リクエストを受け付けますよ。受け付けるだけで聞く耳など微塵も持ちませんが、言うだけ言ってみなさい」
「…そういう事なら始めから受け付けるなんて言わないで下さいよ…。むしろ明らかに断固拒否じゃないですか。全く面倒な…」
「面倒?」
「あのですね、干柿さん、ひとつ伺いますけどね?リクエストって言葉の使い方はしっかり把握出来てらっしゃいます?貴方ときどき言葉の意味がわかってんだかわかってないんだか全然読めない素っ頓狂をかまして来ますからねえ…」
「勿論理解していますよ。私とあなたの間においては一切機能しない言葉だというだけで、他では適切に活用しています」
「…成る程。ヤな感じですねえ…」
「厭ですか?それは良かった。厭がるあなたを見るのは私にとっては喜びですからねえ。遠慮なくもっと厭がって下さいよ」
「いい歳して仕様もない事で喜んでるんですね…。もう少しマシな事して世の中の為にでもなったらどうです」
「…あなたに言われたくありませんよ」
「またまた」
「何がまたまたなんです?イラッとしますねえ」
「そりゃいけません。あんまり朝から張り切ると頭の血管が切れちゃいますよ?貴方はいかにも血圧が高そうに見受けられます」
「あなたは間違いなく低血圧でしょう?」
「おお、ご名答です」
「でしょうね。この話の通じなさは変温動物に感じる無共感を思わせるものがありますよ。あなた本当は両生類なんじゃないですか?」
「水陸両用の両生性は貴方の一大特性でしょうに…」
「さて、いよいよ鮫肌の出番ですかね」
「……その鮫肌さんですがね。……あの…、……実はハリセンボンの皮で出来てるっていうのはホントですか…?」
「…誰がそんな事言ったんです?」
「え?いや、誰って事はありません。あの、いわゆる都市伝説っていうか、ホラ、人面魚的な…」
「…今日は朝からどうでも魚を持ち出したいようですね?」