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【フジ】従順な犬と気まぐれな猫

第1章 俺が従順な犬になった理由



まず最初に重大発言をしよう。

俺は、彼女が好きだ。


全てはそれから始まったのだ。



「ねえ」

「うん?何?あ、なんか飲む?」

「そうじゃなくて。私ゲーム借りに来ただけなの。帰りたいんだけど」

「あ!そういえば美味しい和菓子あるんだよ!持ってくるね!」

「おう聞いてんのかお前は」



もちろん聞こえている。
透き通った可愛い声。
俺に向けられるのはいつも冷たいものばかりだけど、
それでもいつまでも聞いていたいものだ。


彼女は繭子。俺の昔からの幼馴染で、片思いの相手だ。
中学と高校で一回ずつ告白しているが尽く断られている。
それでも交友関係は続いていて、
今日は珍しく彼女が俺の家に来たのだった。

連絡もなしに突然のことだったので部屋は散らかってるし
服だって寝てた時のまんま。
好きな子の前くらい格好つけたいっていうのに
彼女はいつだって気まぐれで、俺の思い通りにはならない。


「せめて今日はそう簡単に帰さねーぞ…」


ゲーム借りに来ただけ?んなこたぁ知るかぁい!

まずは彼女の好きなオレンジティーを出す。
そして確かタンスにクリーム大福があったはずだ。


「お待たせ!」


そしてちゃっかり服も着替えて髪もセットして。
完璧だ。


って、


「めっちゃくつろいでますやん!!」

繭子は俺のベッドに寝そべりながら漫画を読んでいた。
帰るっつったから慌てて茶菓子用意したんだけどな!


「ねーこの漫画も借りていい?」

「うん!いいよー!」


でも許しちゃう。可愛いから。

っていうかそれ、俺以外の男の前でやるなよ?
普通ならさ、理性吹っ飛ぶよ?
俺だって相当我慢してきてるけど、ギリギリなんだからね!?

想いが通じ合っていたなら俺は今すぐ乗っかりたい。
ルパンジャンプしたい。


「あ、オレンジティーだ。フジの家いつもこれあるね」

「そりゃね、繭子の好きなものはいつだって取り揃えてるよ」

「うむうむ、相変わらず従順な犬なこって。わんって鳴いてみて。」

「鳴かないよ?!」


あはは、と可愛い笑い声。
そんな笑みを向けられたら、何でも許してしまう。


「でもさ、フジも懲りないね。そろそろ他に好きな人見つけなよ。」


唐突に振られた言葉は、俺の呼吸を一瞬で止めた。

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