第1章 ~春~
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「和くん、すごい雨だね」
「…だね」
まだ眠たそうな和くんは、
顔を下に向けてあくびしてる。
「和くん、眠いの?」
「…すっごく」
「そっか……」
なんだか今日は話が弾まなくて
ただただ足を進めるだけ。
ピチャピチャと跳ねる雨がハイソックスに染みて
色が濃くなりはじめてる
「ねえ、明日香?」
「ん?」
「そえば、毎日オレと帰ってるけど
翔くんとはさ、帰ろうって思わないの?」
そんなの、
好きな人と…翔君と帰りたいに決まってるじゃん
なーんて私に言えるわけなく
「和くんの方が家近いし、
中学の時も一緒に帰ってた仲なんだから
翔君はいいの。和くんと帰りたい」
こんな素敵なガチガチな嘘をついてしまう
照れくさそうに
「そっか」
って言ってくれる和くんに申し訳ないって思うよ