第15章 光と桜
身体がどんどん重くなる。
ギュッと自分自身を抱き締める。
寒い……
一人は寒い……
凍えるような寒さに震える。
───誰か、助けて………
───お願い、側にいて……
───誰か……愛して欲しい………
震えて縮こまる身体に、フッと光が当たった気がした。
「ここにいる。側にいるだろ。」
ふわりと抱き締められる。
この声、知ってる……誰だったかな?
暖かい……
じわじわと凍えた身体が暖められてく。
「お前が望めばそれでいい。言っただろ?ドロドロに溶けるくらい愛してやるって。だから早く、俺に堕ちてこい………」
甘く囁かれて、抱き締める腕が強くなる。
苦しいくらいに強く抱き締められて心が震える……
抱き締め返したいのに、どうしてか腕は動かなくてもどかしい。
少し乱暴な言い方なのに優しい声。
ねぇ、本当にあなたは私に欲しいものをくれる?
私の前からいなくならない?
側にいて欲しいの、ずっと、ずっと………
みんな居なくなったけど、あなたはずっといてくれる?
暖かな腕と、微かな薬の香り…………
ホッとして縮こまっていた身体から力が抜ける。
温もりにすり寄ると意識は溶けるように落ちていった。
ゆるゆると持ち上がる瞼。
飛び込む光が眩しくて優姫は目を細める。
身体にかかる僅かな重さと気持ちいい温もりと少し懐かしい薬の匂いに顔を動かす。
まだどこか夢をみているようなふわふわした意識で隣を見る。
寝ていても深く刻まれた眉間の皺、閉じられた瞳は起きているときは普通にしていても睨み付けるようなキツイものだと知っている。
少し寝癖がついた髪と額の角……
「阿近さん………」