第15章 光と桜
───あの子でしょ?貴族の妾……
───死んだ人がいるって………
───あの子に貢いで没落したって………
───身体を売ってココに入ったんでしょ?汚い……
───すました顔してよくやるわよね………
突き刺すような蔑みの目。
嘲笑いながら毒づく声、声、声………
あの日から始まった陰湿な行為。
呼び出されて暴力を受けることもある。
うんざりだ。
相手にする必要なんか無いのはわかっている。
また人形の様に心を閉じてしまえばいい。
そう思っても、でもやっぱり心は傷つくんだ。
ここで私を守ってくれる人なんかいない。
悲しくて、悔しくて………
自分の身体を自分で守るように膝を抱えて布団の中に入って眠る。
西園寺家にいた頃もそうだった。
理不尽な暴力に身体も心も悲鳴をあげて、悲しくて、悔しくて……
あの頃から何も変わらない。
私の居場所なんて無い。
どこにも無いんだ……
心から安心して全てを委ねてしまえるような場所はないと言い聞かせても、知っているから苦しくなる。
大切な娘だと抱き締めてくれる腕を。
怪我をひとつひとつ丁寧に治療して、いい子だと撫でてくれる手を。
厳しくも暖かく導いて、優しく見守ってくれる瞳を。
その全てが幸せで……
涙が溢れそうなくらい幸せで……
その全ては無くしてしまったけれど……
知らなければこんなに苦しまなかったのかな。
知っているから耐えていけるのかな?
『卯ノ花隊長………』
ポツリと呟く。
出会った頃のような関係には二度となれないだろう。
だけど、唯一もう一度手にできるかもしれない私の居場所。
少しでもあの方の側にいたい。