第15章 光と桜
膨れ上がる霊力で空気がビリビリと震える。
この心のままに、コワシテシマオウカ………
ゾクゾクとしたものが背筋を這い登る。
妖艶に美しい弧を描いた唇を舌先で舐める。
後ずさる女に1歩、1歩と近づく。
後少しで手が届く……
足元のバランスを崩した女が尻餅をつく。
恐怖に顔を歪めて這っていく。
いつもバカにしたように見下してくる女を今は見下ろしながら追い詰めている。
『いけないよ。悲しみや怒り、憎しみはお前の霊力の封印を解いてしまう。』
父親の声が聞こえた気がする。
優しく頭を撫でて、教え諭す優しい声。
『ぎゃぁぁぁぁ!!』
虚に腕を引きちぎられて殺された時の叫び………
封印を解放すれば虚が来る……
ヒヤリと背筋が冷えて怒りの熱が引いていく。
さっきまで感じていた破壊を求めるような感覚が消えたと同時に増大していた霊力が戻る。
今はまだ私には虚を倒すだけの力がない。
もし、今この霊力に引き寄せられて虚がきたら?
植え付けられた恐怖と悲しみに頭が冷静になった。
目の前に涙を流して床に這い、見上げる彼女を冷たく見つめた後、ゆっくりとその場を離れた。