第15章 光と桜
『ねぇ、あんたの後見人の西園寺家が没落したって本当?』
長い艶やかな髪とやけに色気を強調した化粧をしている彼女はいつも何かにつけて私に突っ掛かるような言い方で絡んでくる。
今日もさほど重要とも思えない西園寺の事を聞いてきた。
『そうらしいです。後見人と言っても名ばかりのものなので、詳しくは知りません。』
いつも通り至って普通に答えるのだが、いつものように彼女はお気に召さないらしい。
私を貶めて何が得するのかわからないが、彼女は私が嫌いな様子。
『あんたは元々孤児で西園寺に拾われたんでしょ。』
『はい。下働きとしてお世話になっていました。』
特に隠すこともない事を得意気になって声高に話している。
いっそ滑稽だと笑いたくなる。
『下働き?!あんたは西園寺家の旦那様の妾だったんでしょ?家老ともデキて、痴情のもつれの清算の為に西園寺家の家老が死んだんでしょ?大人しそうな顔して、怖いわぁ。』
頭の中が真っ白になった。
言葉の意味をゆっくりと理解する。
醜い笑みを浮かべて、蔑みの目で見るこの女は、今何て言った?
見ている景色が紅く染まる。
久しぶりに感じる、肌をチリチリと焦がすような感覚。
あぁ、これは…………怒り。
『ひっ…………』
目の前の女が面白いくらい驚いた顔をして後ずさる。
『私のことはどう思って頂いても構わないわ。でも、死者を冒涜するような発言は許せない。そんなこと、二度と言わないで。』