第9章 罪人
緋真とは肌に触れることも数えるほどしかなかった。
身体が弱い彼女は床に臥すことが多かったから。
そういう行為をするときも、彼女の身体を思い無理をさせないように抑えた。
今、優姫と口づける自分は本能のままに唇を貪っている。
深く、食いちぎるほど激しく吸い上げ絡める舌。
角度を変えて何度も合わせる唇からはお互いの唾液が溢れている。
一度唇を離し見つめた優姫の快感に濡れた瞳と、切ない吐息に最後の枷が外れた。
自分が貴族で、こんなことは許されないと理解はするが、本能が止められない。
優姫の身体を引き寄せて、椅子に座る自分の膝の上に乗せる。
唇を奪い耳朶を噛み、うなじを舐める。
「あんっ……はっ……」
快感に漏れる優姫の声が更に煽る。
このまま出来ることなら抱いてしまいたい。
緋真にもしなかったような激しさでめちゃくちゃにしてしまいたい。
快感に啼かせて乱れる優姫が見たい。
自分の中にこんな熱があることに驚きながら、優姫の首筋を強く吸い、自分の印を刻み付ける。
華奢な身体を折れるほど強く抱き締めた。
「今日は、ここまでだ。」
呟いて彼女を抱く腕の力を抜く。
このまま終わらせたくはないが、ここは執務室であり、今は昼間だ。
本当に本能のまま抱くわけにはいかないだろう。
快感に震えた彼女が名残惜しそうにしているのが堪らなく嬉しい。
濡れた唇と顎を拭ってやり、そっと膝から下ろす。