第9章 罪人
「温かいな……優姫は……」
顔は見えないけれど、声に優しさが滲んでいる。
「私は大丈夫だ。私の為に優姫が悔しがったり、悲しむ事はない。」
「こうして、朽木隊長の事を想うくらいさせてください……私には、それしか出来ませんから。」
朽木隊長の首に回した手を取られた。
そのまま手の甲を口許に持っていき、そっと口づけた。
「嫌ならそう言え。もう触れない。」
手を握ったままはっきりと言う。
口づけられた手の甲から甘い痺れが身体中をめぐる。
「嫌じゃ、ないです。」
震えそうになるのを堪える。
「妻がいた身で不埒な男だと思うだろう?」
もう一度、今度は強く手の甲に唇が押し当てられる。
「思いません……でも、私なんかじゃ不釣り合いです。」
一時の慰みとしても貴族の朽木隊長に触れられていいはずがない。
「関係ない。私が今、優姫に触れたいと思っているのだから。」
振り仰いだ朽木隊長の唇がそっと唇に触れて、すぐに離され「いいか?」と囁かれる。
小さく頷いて目を閉じた。
すぐに深い口づけをされた。
「んっ……ふぁ……」
合わせた唇の隙間を舌でなぞられ、開けろと促される。
僅かに開いた唇から強引に割り込む舌先。
吸い上げられた舌を噛み千切られるのかと思うくらい激しい口づけ。
この方はこんなにも情熱的に女性を求めるのか……
溶かされそうな快感が全身に広がり始める。