第9章 罪人
さらさらの髪……綺麗……
朽木隊長の霊力を感じる。
お茶を飲んで少し気持ちが落ち着いたのだろうか?
僅かにいつもと違う霊力を感じる……
蝋燭の炎のように揺れているこれは、悲しみの感情。
いつもは揺るがないこの方が……
それほど大切な方なのだろう。
それほど大切な義妹さんを罪人として捕縛しなくちゃいけないなんて……
揺れる心を包み込みたくて、思わず後ろからそっと抱き締めた。
「っ!どうした?」
腕の中で朽木隊長が物凄く珍しい事に、目を見開いて固まっている。
っ!私ってば何てことを!!
「すっすみません……」
隊長で、しかも貴族のこの方に気安くもこんな風に触れてしまった。
慌てて離れようとする手を掴まれた。
「いや、いい。暫くこのままでいてくれ。」
腕の中に収まり、目を閉じてしまった朽木隊長。
改めて自分のしていることを自覚して恥ずかしくなる。
「自分でこんな大胆なことをしておいて、恥ずかしいのか?おかしなやつめ。」
目を閉じたまま、雰囲気を察したのか朽木隊長が可笑しそうに言う。
笑顔とまではいかないけれど、先ほど感じた悲しい霊力は消えたようだった。
「い、いじめないでください。自分でも何てことをしてしまってるんだと思ってます。」
ぎゅっと強く抱き締める。
「でも、今回の任務で朽木隊長が辛い思いをしなければいけないのに、お力になれないのか悔しいです。」
肩口に顔を埋めた私の髪を優しい手が撫でてくれた。