第9章 罪人
「四番隊の瑞原です。備品をお持ちしました。」
六番隊の隊舎に着くなり台所を借りてお茶を淹れ、朽木隊長の部屋を訪ねた。
「入れ。」
凛としたいつもの声。
この部屋の美しい主がいつもの様に窓際の机に座っていた。
「お茶も、お持ちしました。」
少し笑って机に近づく。
そう、最近は自然に笑える様になってきたのだ。
張り付けた作り笑いは少しずつ控えるようにしている。
書類から目をあげた朽木隊長が僅に微笑んだ気がした。
「あぁ、すまない。」
すぐにお茶に口を付けて飲んでくれる。
「やはり、うまいな。」
柔らかな午後の光の中でどこまでも美しい方……
「少し……お疲れですか?見せて下さい。」
座っている朽木隊長の後ろに周り手をかざし、霊力を使って診る。
今回の罪人……
朽木隊長の義理の妹さん。
亡くなられた奥様によく似ていて、朽木家の掟に逆らってまで養子に迎えた方だという。
朽木家……貴族の名門の嫡子である朽木隊長。
この方は決して崩れない。
背負うものが崩れることを許さない。
でも、その心まで閉ざしてほしくない。
私のように、感情を殺して大切な何かを無くさないで欲しい。
今、私がこの方に出来る事ってなんだろう?
大きなお世話かも知れないけど、本当は一人で苦しんでいらっしゃるのではないですか?
こうして、お茶を淹れ、その疲れを癒す以外に出来たらいいのに……