第9章 罪人
藍染からの特別指南の後、優姫の雰囲気が変わった。
物腰も表情も柔らかくなり、事務的だった仕事もよく気を配るようになった。
自分の内面の弱さを知り、受け入れた。
他の死神も同じなのだと諭されて壁を作らなくなった。
感情も少しずつ、戸惑いながらも取り戻せていっているようだった。
そうするうちに健康確認の仕事の際に隊士たちの悲しみや悩みなどに気づき声を掛け、身体と共に精神的なケアも心がけるようになった。
優しくなれてきたと思う。
自分にも人にも。
そんな優姫が他の隊の隊士に聖母と呼ばれるようになったのは最近の事だ。
過大評価を貰っていると思う。
しかし、自分に向けられる眼差しが嫉妬や差別、見下したもの以外のものもあるのだと知ることも出来るようになった。
自分が変わることで周りの世界も変わっていくのだと知った。
あれから色々な隊に出入りして健康確認や雑務をこなしている。
今日は少し手が空いて四番隊で倉庫の掃除などいつもできない事をしていた。
昼過ぎに卯ノ花隊長が隊主会から帰ってきた。
少し表情がくもっていた気がしたが何かあったのだろうか?
黙々と作業を続ける優姫を卯ノ花が呼び出した。
「このリストの物を六番隊に持っていって下さい。他にも前回行った時に必要だと思う備品があれば一緒に持っていきなさい。」
「はい。急ですね。何かありましたか?」
「朽木隊長と阿散井副隊長が現世へ罪人の捕縛に向かいます。」
「隊長と副隊長自らですか?」
「今回の罪人は……」