第4章 ガキノコトバ
「ほんとはね、わたしたち全部みてたの」
歩き始めて間もなく、紅風が話し始めた。続けて蒼風も話し始める。
「狐神様のこと、翠月と優雨が妖狐だってこと、全部知ってるよ」
蒼風と紅風も、元々はあの村にいたのだという。
「でもね、見ててひとつだけ思ったことがあるの」
紅風の少し高めの声が二人の耳をぴくりと動かした。
「翠月も優雨も、どうして歳をとらないの?」
たとえ妖狐でも歳はとるはず、しかし二人は見た目もなにもかも、変わっていなかった。
「優雨たちだけじゃない。村の人も誰一人として二〜三歳しか歳をとってなかったよ」
「当たり前だろ、つーか数年の間じゃ見た目なんか変わ…」
「数年じゃないと思う」
蒼風が優雨の言葉にかぶせるように言った。
「数年じゃない。少なくともあれから100年以上経ってるはずなの」
「「…」」
二人は黙ったまま口を開かない。
「ボクたち、大きな木の種を植えたんだ。これが成長して、大きな大木になってた。100年たたないと大人にならないっておばぁちゃん言ってたよ」
「おいガキ」
蒼風が言い終わると同時に優雨がいつもとは違う口調で睨みつけた。
「それ以上余計なことを話すな。捨てられてーのか」
蒼風は、優雨が恐ろしいオーラを放っていることに気がついたのか、話すのを辞めた。
「あなた達が知るには早すぎるわ」
翠月も優しい口調ではあるが、そのことには触れて欲しくないようだ。
しばらく歩くと、目的地である西の街が見えてきた。蒼風は優雨の頭の上から飛び降りると、嬉しそうに街の中に走って行こうとした。
「蒼風、まて」
「なんだよぉ?」
翠月はピンと来たらしく、二匹に聞いた。
「あなた達、変幻はできるの?」
「まだできないの…」
流石に妖狐二人と狐二匹では目立ってしまう。
「ったく、しゃーねーな」
とりあえず優雨と翠月は人に姿を変えた(※優雨の変幻は第壱章参照)
「ひっさびさにこの姿になったわ」
んん〜と背伸びをする翠月。
翠月は黒髪が特徴の女性へと姿を変えた。