第5章 ミコノチスジ
その場にいた誰もが驚いた。
なんと要の右腕には、一本の矢が突き刺さっていたのだ。
「翠月と優雨をはなせ!!」
「こんなことしたらただじゃおかないんだから!!」
そこに立っていたのは蒼風と紅風の声をした子供だった。
年端もいかない男女の背中にはそれぞれ、弓矢と刀が背負われていた。
それは、街に入る前には出来なかった変幻の術だった。
大きな蜘蛛を目の前にし、恐ろしさのあまり逃げ出したかのように思えた2匹は、恐怖と怒りによっていとも簡単に変幻の術を成功させ、街の中で弓矢と刀を盗んできたのだ。
「「蒼風(紅風)!!」」
紅風の放った矢が刺さり、驚きを隠せない表情の要を横目に、蒼風は持っていた刀で優雨たちに絡みつく蜘蛛の糸を切り裂いた。
「お前らいつの間に!?」
「話は後、今はこいつを倒すことに専念しよ!」
紅風が弓矢を片手に構える。
その矢の先には、毒らしき液体が塗られていた。
「心配しないで?毒は毒でもただ痺れるだけの軽いヤツだから」
翠月は破かれた服の前を左手で押さえ、右手で小刀を構えた。
「とりあえず翠月は休んでて!」
「ここは俺とガキ2匹で何とかする、とりあえずお前はなにか服借りてこい」
身動きのとれるようになった優雨も参戦する。
「まだまだこれからです。全員揃って蜘蛛の餌食になるがいい」
これからが本番だ。
―狐巫女よりもはるかに厄介な土蜘蛛に気に入られてしまった翠月…
新たに参戦した2匹のこぎつね達と共に蜘蛛男の退治に挑む―