第3章 ネムリギツネ
雨が降ってきた。
「じゃあお前らはどうなんだよ」
鋭い尾をゆらゆらと揺らしながら、冷酷な目つきで睨みつける。
「私達を殺すことにためらいどころか、罪悪感すらも無かったくせに」
翠月は優しい笑顔で涙を浮かべた。
「それは謝るよ翠月ちゃん!!でも…仕方なかったんだ…この村は昔から妖狐が生まれれば村に災いが起きると信じられてきた…だから…だから…」
「気安く名前で呼ばないで。それにもう遅いですよ村長。私達の心はもう、あなた達に殺され続けてきました。所詮迷信を信じきって、私達を殺そうとしたことには変わりないですし」
皆は謝り続けた。ただひたすらに。
「フン、心にもないことを。俺も翠月も、お前らに殺されたんだ。その謝罪の言葉も、所詮は自分らが殺されたくないからだろ?」
何も言えなかった。
妖狐を殺そうとしてきたのは玲奈のみならず、村人全員だったのだから。
「もう戯れ言は終わり。心配しないで、狐巫女は殺さないでいてあげる」
(よく言うぜ…村ごとぶっ壊すくせに)
優雨と翠月はそのままその場を離れた。そして村の入口に立つと顔を見合わせ、優雨は左手、翠月は右手をお互いに組み合わせ、叫んだ。
「「秘術、魔炎百狐(まえんびゃっこ)!!!」」
すると狐の姿をした黒い炎が、村を囲んだ。
するとその狐たちは子供のような姿に化け、黒い子供が村の周りに立ち、手を繋ぎ円を描いた。そしてそのまま、回り始めた。
『かーごーめかごめ……籠の中の鳥は……いーつーいーつ出会う……夜明けの晩に……鶴と亀が滑った……後ろの正面だぁれ…』
ピシャァァァァァ…
けたたましい音が鳴り響く。
それと同時にまばゆい閃光が辺りを包んだ。
しばらくして、村人達は目を覚ました。続いて蓮も目を覚まし、同時に玲奈に駆け寄る。玲奈も目を覚ましたが、2人はその光景に驚きを隠せなかった。なんと玲奈の腹部には優雨がつけたと思われる傷は、跡形もなく消えていたのだ。