第3章 ネムリギツネ
「私達はなにをしていたんだ?」
「さぁ?」
村人には誰1人として記憶が残ってる者は居なかった。妖狐のことも狐巫女のことも、狐神の伝説でさえ記憶にないのだ。
しかし2人だけ、記憶が残っている者がいた。
玲奈と蓮だった。
この2人ははっきり覚えていた。
「なるほど…魔炎百狐か…」
「魔炎百狐?」
「えぇ…記憶を司る妖術よ。私たち以外の村の人達の記憶を消してなかったことにする、所詮馬鹿狐のやることね」
村人達は何がなんだかわからぬまま、それぞれの家に戻った。
「ねぇよかったの?あいつらだけ術かけなくて」
「かけなかったんじゃない、かけられなかったんだ」
優雨はため息をつきながら言った。
「あいつが持ってたペンダントあったろ?あれのせいで術がかかんなかったんだよ。男の方は手応え的に鎮石(しずめいし)、おそらく狐巫女の持ちもんだろ」
「なるほどね、最後まで悪あがきしてくれるじゃないの」
2人は村に背を向け、どこに向かう宛てもなく歩いた。
「これからどうする?西の街にでも向かってみる?」
翠月の提案で、2人は西の街に向かうことにした。
そこで更なる試練が待ち受けていると知らずに………