第2章 ツノルオモイ
それから何日か過ぎ、ふと蓮が話しかけた。
「お前は妖狐を殺した英雄なんだ。そんな暗い顔すんなよ、殺された両親の仇なんだろ?」
玲奈の親もまた、優雨に殺されていた。
それは1ヶ月前のことだった。
「「……」」
「お前らは…妖狐!!」
グシャッ……
驚く間もないまま、社にいた玲奈の両親は優雨に殺されていた。
あたりは血まみれで、見るに耐えない姿だったという。
━恨むなよ?勝手に俺らを生み出して
忌み嫌ったお前らが悪いんだ。
忌み嫌われ、親にすら捨てられ、そして狐巫女に殺される運命。俺たちは耳と9本の尾があるってだけで…中身は…━
「普通の人間なのに…」
《ボク達は此処に居ちゃいけないの?
どうしてみんなそんな目でわたし達を見るの?
ボク達は何もしていないのに…
やめてよ…
そんな目で見ないで…
パパ…ママ…どうして…
ボク達だけなんでキツネの耳としっぽが生えてるの?
こんな思いするなら…耳なんていらない…しっぽなんていらない…
特別な力もいらないから…
だからお願い……
誰か…助けて…
ボク達を…わたし達を……
殺さないで……
ころさないで……
コロサナイデ………………………》
「なんで俺らばっかり……」
「ただ、お父さんとお母さんの子として生まれてきただけなのに……」
本当は殺したくなんかなかった。
だが、殺さねば終わらない。
二人の復習は更に続いた。
玲奈が帰ってきた頃には既に遅かった。
「パパ…?ママ…?」
部屋の中は赤く染まっていた。
両親の首には、爪痕が残っていたものの、腹は裂け、内蔵もぐちゃぐちゃだった。
「いや……いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
玲奈は泣き叫んだ。
絶望に悲しみ、怒りが一気に湧き出てくる。
ただ怖かった。