第2章 ツノルオモイ
そのときだった。
「随分楽しーことしてんじゃねーの?オレも混ぜろよ櫻井」
「朝比奈(あさひな)っ!」
一人の男が現れた。
名前は朝比奈 蓮(あさひな れん)。
「まったく…狐神の屋敷燃えてみんな必死こいてんのに、お前はこんなとこで何やってんだ……って妖狐!!」
「なんか用かオッサン」
優雨は攻撃をやめ、冷たい目で蓮を見下した。
オッサンと言う言葉にムカっときた蓮はムキになって言い返した。
「オッサン!?オレはまだ18だぞコラ!!」
そんなことは気にもせず、玲奈は首からぶら下げたペンダントのようなものを握りしめたまま、ブツブツとなにかを唱えた。
そのとき、突然優雨が叫んだ。
「!?駄目だ!翠月!!そいつから離れろ!!!!」
「え?……きゃっ…」
翠月の身体は何かにしばられ、翠月は動けなくなってしまった。
そのまま宙に浮く。
「なによっ…これっ…」
「翠月!…ぅぁっ…!!」
翠月同様、優雨も同じ結界のようなもので縛られてしまった。
身動きすらとれないまま、翠月と優雨は玲奈によって力を吸い取られていく。
「ナイス櫻井!」
その言葉と同時に蓮が参戦し、二人は更に弱っていく。
「くっ…」
「あ"ぁぁっ…」
すると二人の身体は突如発光し、激しく地面に叩きつけられた。
力を吸い取られた二人は立つことすらままならなかった。
「これで最後…」
動かなくなった二人を見下ろしながら、玲奈はゆっくりと手をかざした。
玲奈の目には少し戸惑いがあるように見えた。
「ハァ…早…く殺…せ…よ…ハァ…ハァ……憎…いんだろ……?…ハァ…こ…の俺…が……」
かろうじて話せる程度の優雨がなかなか殺さない玲奈に早く殺せと命令する。
玲奈は静かに火を放った。
「鬼ごっこは終わり…もう二度と、妖狐がこの世に現れないように……パパ…ママ…これでよかったんだよね…」
妖狐とはいえ、人を殺してしまった玲奈はペンダントを握りしめたまま、静かに涙を流した。
燃え盛る炎をその目で見ながら。
「ごめんね古神君…」
玲奈は涙目のまま蓮と共にその場を後にした。