【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第1章 ゲーム実況絵師
「繭子~!!なんでアブさん描いてくれなかったのおおおおおおお!!」
「キャアアアア!!ノックしてよ変態変態変態変態変態変態!!!」
「変態いただきました!!ありがとうございます!!」
バコォン!!
かつて枕がこんな破壊音を奏でたことがあっただろうか。
咄嗟に投げつけた枕を顔面に見事に喰らった兄は
反動で後ろに仰け反った。笑顔で。
この変態が。
「ていうか放送見てたの?!コミュ限なのに!!」
「勿論!!愛しの繭子の放送だよ?!そりゃ見るよ、アマレコで録画もするよ、フォルダ保存もするよ!!サブ垢でコミュニティ参加だって抜かりないよ!!なめ回すように!!」
「なめ回すように?!」
ストーカーかよ。
こいつがシスコンなのは知ってたけど、最近ガチで身の危険を感じます。
「繭子が好きなのは最俺かあ、確かに面白いよね。でもアブさんのが面白いよね?!しかもイケメンだよね?!さあ遠慮なくアブ信者になってくれていいんだよ?!お兄ちゃん大好き(裏声)とか言いながらこの大きな胸に飛び込んできていいんだよ?!」
「飛び込まねえよ!!!」
ドバンッ!!
かつてペンタブがこんな破壊音を奏でたことがあっただろうか。
咄嗟に投げつけたペンタブは兄の顔面にヒットし、
流石に痛かったのか兄はその場に崩れ落ちた。
勝った。
「俺の鼻が曲がったらどうすんの?!」
「タンポポでも添えてあげるね」
「凄い良い笑顔だけどそっちのハナじゃない!!」
「あーー!!!ペンタブ欠けてんじゃんどうしてくれんのおおおおおお!!!」
「投げたの繭子だからああああ!!!」
投げつけたペンタブを拾うと、ペンの先が欠けていた。
やばい。これでは絵が描けない…。
「明日もお絵描き枠やるって言っちゃったのに…。」
なんで大事なペンタブを武器に使ってしまったのか。
自分の後先の考えない行動につくづく嫌気が差したが、
いやこれは兄のせいなのだ、
兄が変態だから悪いのだ、と心のなかで責任転嫁した。
「物は大切に使わないと駄目だよ。アブさんのことも大切にしないとだめだよ。」
「そうね、物は大切にしなきゃだわ…」
「アブさんも、」
「ペンタブ…」
「(聞いてねえ)」
私は、頭をぽんぽん、と
撫でてくる兄の手を振り払った。