【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
「お邪魔します」
「どうぞ入って~」
来客が嬉しいのか、ヒラは跳ねるように部屋の奥へ行き、手招きする。
その様子に私は思わずクスっと笑ってしまった。
リビングはさっぱりとしていて、TVの前にはゲームやカメラ、ソファの上にはイルカのぬいぐるみが転がっていた。
「あー、これ前にヒラの実写動画で出てきたぬいぐるみだ」
「わあ、見てくれてるの?」
「もちろん。最俺メンバーの動画は結構見てるんだなあ」
ファンだからね、と添えるとヒラは本当にうれしそうに笑った。
「そうだ、お菓子とか買ったのは良いけど、お昼ごはん買い忘れたね。何かあったかなあ」
「そっかもうお昼だっけ、起きたのがついさっきだったから時間の感覚が・・・お菓子で済ませてもいいけど、私何か作ろうか?」
キッチンで冷蔵庫を覗き込むヒラの後ろからそう声をかけると、ヒラはビタッと動きを止めた。
「・・・て、手作り?繭子ちゃんの、手作り・・・?」
「え、不安・・・?」
「まさか!違う違う!食べたいなって!」
「よーし、じゃあ何か作ろう~!」
やったー!と大はしゃぎするヒラ。そんな彼を横目に私も冷蔵庫を覗き込む。多くはないけれどいくらか料理が出来そうだ。
「あ、ヒラ!良い事思いついちゃった!」
「?」
「この料理の風景を、動画にしてみない?」
私のこの言葉が、とんでもない動画を生み出したのである。
***
カメラを回してから30分くらいだろうか。私たちはマスクや面などの実況スタイルで料理をしていた。
「わ~ぴょこ太ちゃん手際すごいなあ~!」
「見てないで働け!」
「僕何したらいいんだろう…」
「ヒラは人参を切るマシンだよ」
「オレハ・・・キルマシン・・・」
「そう、あなたはキルマシン・・・人参を切るためだけに作られた存在・・・」
「オレ・・・キル・・・ニンジン・・・キル・・・」
「あ、ごめんこれ人参使わないや!」
「僕の存在理由なくなったー!!www」
順調に不毛な会話で笑いを取り入れつつ料理は完成した。
食べるところだけは互いに顔を写せないため手元だけにカメラを向ける。
「わー!美味しい・・・!僕あとでキヨたちに殺されそう」
「大丈夫あなたはキルマシン」
「キルってそっちの意味だったのw」
こうして楽しい食事と撮影は終わった。