【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
「おいしかった~!ごちそうさま!」
「お粗末さまでした!動画も結構面白いの撮れた気がしない?」
「うん、凄い楽しかったwwやっぱ繭子ちゃんって頭の回転が早いから喋りが面白いよね」
多分それは四六時中よく喋る兄を見て育ったからだとは思うけど。
「いやーヒラの可愛さには勝てませんわ~」
「僕のキャラ作りの必死さ出てない?」
「たまにサイコパスだけど、既にあざといからなあ」
「あれえ…」
料理を食べ終わり、後片付けを済ませると、次こそゲームをしようということで私とヒラは二人掛けのソファに座ってTVの方を向いた。
何のゲームで実況を撮ろうか?と2本目の撮影をするに至って軽く打ち合わせる。
すると、ふいにヒラの視線を感じた。
「ん?何?どうしたの?」
「いや、繭子ちゃん、慣れてきたなあって」
「え?」
「最初は敬語で、僕達の前でも堂々としつつも、どこか緊張感出てたからさ」
そりゃ、ファンですから。でも確かに今は、緊張感はなくなったかもしれない。対等な立場だとは思ってないけれど、良い友人になれたと思っているのは、確かだ。
「今でもたまに敬語が出てしまう事もあるけど、確かに慣れたかな。勿論これからも最俺のファンだし、みんなは私にとって先輩で、年上だし。目上の人って印象は強いんだけど、こんな私と仲良くしてくれる人たちと壁を作りたくないっていう欲深さがあるかな」
だからこそ、友達って言って良いのかはわからなくて、それだけは言えなかった。
「繭子ちゃんは真面目だね~」
「ああ何か昨日お兄ちゃんにも言われたような・・・」
そうなんだ~って笑いながら頭をぽんぽんと触ってくるその動作もデジャヴだ。
「フジの家に入るときなんかも緊張してたのに、今日は凄い楽しそうに過ごしてくれてて嬉しいよ」
「あー・・・だってフジの時は、男の人の家だからそりゃちょっとはドキドキするものだよ」
ヒラが帰ったあとやたら気まずかったんだからね、と説明するとヒラは不思議そうな顔をした。
「…フジの時『は』?」
「?」
「僕だって、男だよ?」
一瞬眉をひそめたヒラは、急に冷ややかな目をしてじりじりと詰め寄ってきた。
それはいつもの可愛い彼ではなく。
「男、なんだよ」
気づけば私は、彼に押し倒されていた。