【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
「アブさんとしては、最俺とか関係なく繭子は凄いって思うなあ。確かにきっかけは彼らだったかもしれないけどさ、繭子じゃなかったらここまで沢山の人に支持されなかったはずだよ」
「そうかなあ・・・」
「そうだよ。元々繭子の魅力に惹かれたリスナーが集まっただけなんだ。そこから更に最俺っていう存在が背中を押しただけであって、ここまで来れてるのは、繭子自身の努力と、持ち前の魅力があったからだよ」
もちろんアブさんも繭子の魅力に惑わされているファンの一人だからね!
と、兄は自分の胸をどんっと叩いて笑ってみせた。
普段は本当にどうしようもないシスコンだけど、こういう風に元気づけようとしてくれる所は、「お兄ちゃん」だなあって思える。
「そうだね・・・ありがとう。正直、最近ちょっと周りを気にしすぎちゃっててさ」
「わからなくもないけどね~アンチとかほんと鬱陶しいし。でもアンチって絶対俺の事好きだからね。だって何だかんだ言いながら俺の動画見てるしSNSも監視してくるからね!」
それは言えているけど嬉しくない。
そういえば、ヒラも言ってたっけ。
『繭子ちゃんも人気者だって証拠だよ。アンチがつくほど好かれてるってこと!僕も繭子ちゃん好きだし!』
彼の言葉と、ふわりとした笑顔を思い出す。
私は、そうか。
支えてくれる人がいる事を忘れちゃ駄目なんだ。
「ついこないだまでただのニコ生主だったから、こんなことで悩む日が来るとは思わなかったなあ・・・」
「それほど繭子は魅力的だってことだよ。さすが俺の妹~!結婚しよ~!」
「最後言ってる事が矛盾すぎる件について」
きゃ~とか気持ち悪い声を出しながら抱き着こうとしてくる兄の顔面を片手でブロックし、またいつも通りぎゃあぎゃあと兄妹で戯れた。
そうして自然と笑みを零せることが出来た頃、電話が鳴った。
嬉しそうに私に足蹴にされている兄を後にしてスマホを除くと、どうやらキヨからの着信のようだ。
こんな時間に何事かと思って電話に出ると、耳に振動が来るほどの大きな声で彼はこう言ったのである。
「よお!今何してんの?」
「ばかじゃないの?」
朝4時にかかってくる内容じゃなさすぎて思わず吹き出しながら暴言を吐いた私だった。