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【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。

第3章 人気者の苦痛


「そろそろ帰りますね、うちの兄、心配性なんで」


ホラーから逃れ落ち着くと、時間はだいぶ遅い時間となっていた。
そろそろ帰らないとまた兄がうざい。


「あ、そっか…あ!送ってくよ!ここ人通り少ないし、女の子ひとりで危ないし!」

「大丈夫ですよー、私逃げ足は速いです」

「そういう問題じゃないからね!そしてまた敬語!」

「あ、やっぱつい使っちゃうな…」


すぐに敬語なしの呼び捨てとは結構難しいものだ。
どうにか慣れなきゃなと試行錯誤していると
上着を羽織ったフジが鍵をもって部屋から出てきた。


「わあ寒いねー繭子ちゃんそんな格好で大丈夫?上着貸すよ?」

「駅入っちゃえば暖かいから大丈夫」

「そか、あ、じゃあ……えっと、その」

「?」


今日のフジはやたらと言葉を濁すな。


何かを言いかけようとしたようだが言いづらいようだ。
なんかその場で行き場のない手をわしゃわしゃ動かして。

その手はゆっくり

私の手に伸びた。


「下心はないからね!」


暖かい。
手を、繋いでいるのだ。


それを理解するまで私はぼんやりとフジの顔を見上げていたが
だんだん恥ずかしくなってきては
その手を緩めるべきか強めるべきかを考えながら歩く。


おかげで普段のトーク力は落ち、シンと静まり返る帰り道。
フジも何か話題を作ろうときょろきょろしている。

と、その時


「…あ!繭子ちゃん!あれなんだろ!」

「え?」

「なんかあそこに誰か…あ!!お化けだ!!」

「え!?やだ!!」


私は咄嗟に繋いでいた手に力を込め、
更にその腕にしがみついてしまった。

数秒、そうしていたが
考えてみれば今のおかしくないかと。

フジの顔を恐る恐る見上げると。


「~~~~~~~っ」


なんか顔を赤くして悶えている。


「だ、騙したなあ!この!!」

「ごめ、ちょ、ほんと、かわいすぎて…!」

「もうばか!フジのばか!!!ばかばかばか!!」

「ごめんて!」


でも和んだの事実で。
そのまま戯れあいながら駅まで歩いた。


「今日は本当にありがとう」


楽しかったよ、と付け加えると
俺も。と返してくれた。


「またおいで」


返事の代わりに手を振ると、フジは笑った。



「本当は帰したくなかったなあ」



彼のその言葉は、聞き取れなかった。
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