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【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。

第3章 人気者の苦痛


ヒラを見送ると、
フジと二人きりになり妙に気まずくなる。

それはフジもだそうで、そわそわしている。

あくまでもここは男の人の家なのだと今更ながら実感した。


「あ、えーと…じゃあ私もそろそろ、」

帰ります、と言おうとしたのだが。

「さて!続き見ないとね!もうクライマックスだし!最後見ないで終わるとかもやもやしちゃうし!!」

「え!?いやいやいやいや!私ぜんぜんもやっとしないんで!結構です!」

「ほら玄関寒いでしょ!部屋入って!ソファ座って!」


ぐいぐい、と背中を押され
初期位置に戻される。

半ば強引に座らされると、一時停止のボタンを解除され
テレビは再びホラー映画を映す。


「うああああ…ヒラさん居なくなった分、横の空間が寒いんですけどうわあああ」

「えっあっそうか、えっと…あ、じゃあもっとこっちおいで!」

「!?」


フジもこの状況に若干テンパリ気味なのか、
声が裏返りつつも私の肩を自分の方に寄せる。

ああ暖かいさ、そりゃ人の温もりとか暖かいさ。

でもこれはだな。


更に気まずい。


「え、えっとえっとあのフジさん」

「ほ、ほらまた敬語使ってるよ繭子ちゃん、いいから画面見る!」

「え、あ、はい!」


もう互いにテンパっている。
もう見るしかない。ここはテレビに集中するしかないのだ。

肩をがっちりと掴むフジの手が若干震えてるなあとか
妙に背筋伸びてるなあとか気にしてる場合ではないのだ。

変な気まずさを感じている自分だったが
それ以上にホラー映画の存在も負けてなく、


「きゃあああああああ!!!」

「うおぉ!?」


クライマックスの脅かしシーンで見事に私は跳ねた。
たぶんお尻浮いた。ぴょんってした。
それに釣られてフジも驚いて。

怖さと恥ずかしさで私は両手で顔を覆って、そのまま前のめりになる。


「うえええん…」


映画のエンディングが緩やかに流れると
フジはちょっと笑って、頭を撫でてくれた。


「よく頑張りましたねー。終わったよーもう大丈夫だよー」

「もうフジのお家こない!」

「(子供のようだ…)まあまあそんなこと言わないで!」

「もうしらない!」

「(あ、拗ねた。可愛い)」


先程までの妙な気まずさは消え
暫くは拗ねる私と宥めるフジの攻防戦となった。
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