【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
海外のホラーって最終的にゾンビだったり
肉弾戦があったりであまり怖くないのよね。
だがジャパニーズホラー、お前はダメだ。
「うぇえぁあああ!!」
「繭子ちゃんの悲鳴相変わらずプロだな」
「繭子ちゃんほらほら、鏡に女の人」
「やーだー!!」
二人用ソファに。
左にヒラ、右にフジ、そして逃れられないようにするためか
二人の真ん中にちょこんと座る形で捕獲されている私。
主に太ももと肩がぎゅうぎゅうで、人の温もりがある分
怖さは少しだけ緩和されているが
あまり距離をとってないテレビは無常にもホラー映画を延々と流すのだ。
「やだやだやだやだ!絶対あれ、扉の奥からお化け出てくるもん!見なくてもわかるもん!!」
「大丈夫だって、ほら、目ーあけよー?」
「(何この生き物くっそ可愛い…)」
ヒラが顔を覆う手をぐいーっと引き離す。
今日のヒラは悪魔らしい。天使ヒラカムバック!
そしてなぜかフジは顔を手で覆いながら震えている。
「ふ、フジ?大丈夫?」
「へぁ!?う、うん!可愛いよ!」
「…は???」
「あああえっと!何でもないよ気にしないで!ほら画面に集中しよ!」
フジはぐいっと私の頭を掴んでテレビに向けた。
なんなのこいつらの私の扱い。
「せめてさあ、部屋明るくしよ…?」
「暗くして見る方が雰囲気あるよ~」
「なくていいの!!!」
「(半泣きじゃんなんなのこの子可愛すぎる…)」
再びフジが震える振動が肩に伝う。
本当にどうしたんだこの人はと、もう一度声をかけようとした瞬間。
ピリリリリリ
「きゃああああああ!?」
「!?」
「あーごめん、僕のスマホ」
「何その古い着信音!!」
隣で鳴り響いたのはヒラのスマホだった。
電話のようで、席を外す。
すると数分もしないうちにちょっとがっかりした顔で帰ってきた。
「ごめん僕ちょっと職場に呼び出されちゃったから行ってくるね」
「えっ今から?」
「うん、ちょっと書類まとめるだけだけど…あーあ最後まで見たかったなあ…繭子ちゃん」
「映画じゃなくて私かよ!」
真顔で言うなよ!
「それじゃフジ、繭子ちゃん襲っちゃダメだからね~」
「襲わないよ!?」
またね、そう言ってヒラは急ぎ足で家を出ていった。