【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
ピンポーン
チャイムを押すと、ドアの向こうから足音が聞こえてくる。
その音に応えるように、
ヒラさんが「ただいまフジー買ってきたよー」と叫ぶ。
するとガチャりとドアは開いた。
「お前おっせーよ何時間かかっ……た…」
フジさんは目を大きく開いて微動だにしない。
そりゃ聞いてないものね、私がくるなんて。
ヒラさんだと思って話かけたら目の前に居たのは私だったなんて。
「…えと、すみません、遅くなっちゃって。なかなか画材の売ってる場所がわからなくて…」
サプライズ!と言おうかどうか迷ったけど、とりあえず先に謝った。
「うぇぁあ!?繭子ちゃん!?え!?何!?何で!?ヒラ説明!!!」
「フジのお陰で繭子ちゃんとデートが出来て楽しかったでーす」
「誰が感想言えと!?ってかデート!?はあ!?」
軽くパニックのフジさん。
とりあえず中に入って!と、背中を押される。
私とヒラさんは荷物をフジさんの部屋に運ぶと
事の成り行きを説明した。
「罰ゲームだったのに何ご褒美もらってんだよお前!」
「えへへー」
「でも、私もまさかフジさんの家に来るとは思いもしませんでした」
「俺だってまさか繭子ちゃんを家に入れる日が来ようとは思わなかったよ。でも、こういうのもいいね!くつろいでって!なんもないけど!」
「あ、そうだフジ醤油ある?サーモン買ってきた」
「お前はいつもくつろぎすぎなんだよ!!!」
ほんと仲いいなこの2人は。
「あはは、微笑ましいですね」
私は口元に手をやって笑うと、フジさんとヒラさんは互いの顔を見合い、何だか照れくさそうにする。
「そうだ、繭子ちゃん何か飲む?」
「いえいえお構いなく。勝手に押しかけちゃったし」
「いいって。来てくれて嬉しいよ、とりあえず麦茶もってくるね。…あ、それと」
フジさんは台所に向かう前に足を止める。
「敬語。俺たちにも使わないでいいよ。キヨばっかずるいって」
「僕もそれ賛成~。仲良しさんになろって言ったんだしさ」
だから、はい、僕たちのことも呼び捨てにしてね。
そう言葉を付け加えると2人は笑った。
私も釣られて笑って。
「わかったよフジ、ヒラ。ありがとうね。」
呼び捨てはやっぱちょっと照れくさいけど
とても、暖かい気持ち。