【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第1章 ゲーム実況絵師
放送を一旦切り、次枠へいく前に休憩を取ろうと、
冷蔵庫から水を取り出した。
「ふう、すぐ次枠とるって言っちゃったし
はやく戻ないとな。」
ガチャ
玄関から鍵の音がした。
ドアが開くと同時に、少し疲れたような声が響く。
「ただいま~…つかれたー!!」
それは兄だった。
仕事帰りでへとへとのようだ。いきなりソファに寝転んではこっちを振り向く。
「繭子~ご飯作ってよ~!」
「私忙しいの。お兄ちゃん自分で作って。」
「え~~~俺頑張って働いてきたのに~~~!」
「私これからニコ生だから。」
「え~~~俺も出るううう~~~!!」
「本気でやめて。お兄ちゃんと私が兄妹だって知られると色々やばそうだから。」
「別にいいじゃあああああん!!」
「あああああくっつくなああああああ気持ち悪い!!!」
私は絵師。
趣味で絵を描く他、ニコ動で活躍する人のサムネを描いたり
動画でのカットインや、ボカロのPV等を手がけたりもしてきた。
一方、兄も、ネットでは有名人だった。
それはそれは、私とは比較にはならないのだろう。
だって彼は、
「繭子が実況者アブさんの妹だって知れ渡れば、大騒ぎだろうな~」
「変態ホモ野郎の妹ってレッテルが嫌なんです」
そう、彼もまたニコ動で活躍するゲーム実況プレイヤー。
【アブ】なのだ。
「やだなあ、俺は紳士だよー!」
「はいはい変態紳士変態紳士。」
何が一番やばいかって。
兄にはファンもアンチも山ほど居る。
アンチはまあ放っておくとして、
人気者の兄のファンだ。
私のような地味な妹がしゃしゃり出て、
面白くなく感じる人も出てくるだろう。
私だけに批判が集まるなら良いけど。
「巻き込むのは、嫌だし。」
以前、兄の実況動画に、私の絵を掲載したことがあった。
もちろん妹が描いたということは伏せている。
ただのカットインだ。2、3秒しか映されない程度の。
「上手い」「この絵好き」など嬉しいコメントが流れてはいたが
中には「下手くそ」「この動画に合わない」など批判も集中した。
私の絵が兄の動画を汚した。
心無いコメントを見たあの日から、
私は今後、兄の活動に介入しないと誓った。
「…まーた、あの時のこと気にしてる?」
私は無言で部屋を去った。