【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
「粘土、と言っても色んな種類があるんですね」
「フジ使ってたのどれだっけな~」
画材売り場の棚を凝視する私たち。
お店を見つけることが出来たは良いが、肝心な品物の種類がわからない。
「もうこの際、適当に色々買っていきましょう」
「えー、そんな安いものじゃないよこれー?」
「これ誰の費用です?」
「フジ」
「よし、好き勝手買いましょう」
「繭子ちゃんフジの扱いもう完全キヨと一緒」
最後の言葉は聞かないことにした。
「あと、絵の具でしたっけ」
「うん。これはどれにしよう」
「私の使ってるのと同じでもいいかな、これ。使いやすいし、結構多彩なんですよ」
「あ、そっか、繭子ちゃんも絵描くんだもんね」
「殆どデジタルですけど。たまに水彩とかもやるんですよ」
「じゃあ人気絵師のおすすめということでこれにしちゃおっか」
「人気かどうかは置いといて、是非これは使ってもらいたいですね」
粘土でいっぱいのカゴに絵の具を入れる。
わあ、凄い金額になりそう。
…とか言いつつ凄い内心楽しんでる自分も居る。
「あとは会計だー繭子ちゃん本当にありがとう。やっと買い物が終わりそうだよ~」
「いえいえ、お力になれて良かった」
「あ、そだ、まだ帰らないで!お店の外で待ってて!」
「?」
「折角だし、お茶でもしよう」
ふわりと笑って。
音符でも見えそうなご機嫌な足取りで会計に向かうヒラさん。
「可愛いなあ」
よくコメで流れる「ヒラ可愛い」は
ネタじゃなくてガチだよなあと実感した。
***
買い物を済ませた私たちは、近くのカフェに入った。
椅子に腰掛けると、まだ若い筈の私たちの口からは大きなため息が出た。
「全部持つって言ったのに、聞かないんだもんなー」
「そりゃ紙袋4つに、あんな大量の重い粘土、1人で持たせるわけには。ヒラさん華奢だし」
「それちょっと傷つく…」
クスン、と俯く。可愛い。何度も言う。お前は可愛い。
「それにしても変な感じですね、マスクもお面も無しで、こうやって人の多い所で堂々とお茶するっていうのも」
「僕たちの居る世界が変なだけだよ」
「まあ、確かに」
素顔の自分達が、大きな窓に映る。
私は昼間の女の子達の会話を思い出していた。