【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
帰ると、仁王立ちの兄が私を見下ろしていた。
一応電車の中でLINEは送っていた。
遅くなった事やスマホ見てなかった事の謝罪もした。
帰る大体の時間も言った。
それでも「今どこ」って5分置きに来るから
キモいのを我慢して丁寧に現在位置を告げた(後々うざいから)
そして、この顔である。
「お兄ちゃん顔。顔。怒るのか泣くのかどっちかにしよ」
「繭子~~~!!お゛が え゛り゛ぃぃいい!!」
「あーはいはい、ごめんってば。ただいま」
がばっと私の腰に抱きついてわんわんと泣く兄。
私は呆れながらも、よしよしとその情けない頭を撫でてやる。
まるで犬のようだ。
「本当心配したんだよ!?連絡寄越さないし帰ってこないし!!俺の可愛い繭子に何かあったんじゃないかって思ったらアブさんいてもたってもいられなくて、とりあえず実況撮ってたよ!!」
「あ、結構余裕そう」
「しかもホラーだよ!!」
「あ、あの怖いもの嫌いなお兄ちゃんが自らホラーだと…!?」
それは重症だ…。
「繭子もキヨ君とホラーやってて楽しそうだったからちょっとやりたくなったんだけど、一人じゃ怖いんだよ!一緒にやろう!ね!お兄ちゃんと一緒なら怖くない!!」
「色んな意味で怖い。パス!」
「やーーだーーーーお兄ちゃんと一緒のお布団に潜ってお互いの肌を寄せながらホラーやるのぉーーー!!」
「駄々こねるなー!!!」
もうやだこの兄。
とりあえず私は未だ引っ付いてた兄を剥がし、
靴を脱いでさっさと部屋に戻…ろうとした。
がっちり。
捕獲再び。
「いい加減しつこ…」
「でも、繭子が本当に無事で良かった」
さんざんふざけた挙句の、その優しい笑みは、卑怯だ。
「…お兄ちゃん、ごめんね」
「いいんだよ。ちゃんと帰ってきてくれたから」
こういうところが、大人なんだよな。
「でも、お仕置きとして」
んん?
「今日は俺と一緒に寝ようねー」
あ、こいつも前言撤回です。
無視して自分の部屋に戻ろうとするが阻止され
私はいとも簡単にひょいと持ち上げられる。
「繭子は軽いなあ。同じもの食べて生きてるはずなのになあ」
「はーなーせー!」
じたじたと暴れてみるが無意味。
私は流れるままに兄の部屋に連れて行かれた。