【最俺&アブ】実況に手を出したら大変パニックなことになった。
第3章 人気者の苦痛
「あれ、終電逃しそうじゃね」
「え、うそもうそんな時間!?」
あれから食事を終えた後もだらだらと喋り倒していたら
時計の針はかなり進んでいた。
さほど急ぎもしないキヨを横目に(マイペース!)
私は焦るように身支度をする。
「先行ってっから、慌てんなって」
「置いてかれる追い打ち仕掛けられたら尚更焦るわ!!…って、え?会計…」
キヨは伝票をひらひらと左右に動かしながら
会計のカウンターに行った。
…どうやら奢ってくれるらしい。
私はきょとんとしながらも身支度を済ませると、
会計が終わったキヨと同じタイミングで合流した。
「ごっそさんでーす」
「あ、待ってよ…!」
ありがとうございましたー、という店員さんに私も「御馳走様でした」と頭を下げつつ、すたすたと外へ行ってしまうキヨの後ろについていく。
「罰ゲームじゃなかったの?」
「初めて飯行くのに女に払わせるとか何かダサいじゃん」
とか言いつつ。
本当は払わせる気なんてなかったりして。
「罰ゲームってぐらいだから、もっとすげえことさせねーと」
前言撤回だ。
「キヨは…キヨだねえ…」
「それどういう意味だよ」
「別に。あ、ほら、もう少し早足で行かないと。電車遅れちゃう」
「別にいいんじゃん」
「よくないよ!」
逃したらタクシー代が!
遠いのに!!
っていうかお兄ちゃんに何の連絡も入れてない!やばい!
そっちのがやばい!!煩そう!ってか、うざそう!!
…はっ!スマホずっとサイレントにしてたけどまさか…!
慌ててポケットに入れてたスマホを取り出すと
案の定、兄からの電話やらLINEやらエライ事になっていた。
これは帰ったら…覚悟しなくちゃな…。
「電車逃したらまだ繭子と居られるんだよな」
「…え?なんか言った?」
「…べつにー」
ほら、急ぐぞ、なんて今度はキヨが言い出して。
結局電車にはぎりぎり乗れて、
乗り換えの駅で私たちは別れた。
「今日はお疲れ様」
「おう。帰り気をつけろよ」
「うん、キヨも。今日はありがと、楽しかった」
「俺もー。また呼ぶからホラーで」
「鬼だ!」
互いに笑いながら手を振る。
「罰ゲーム考えとくからな!逃げんなよ!」
「逃げませんよーだ!」
彼なりの、「またね」だった。