第2章 黒と白の似たもの同士
白澤の目にはどう映っているのか。
ややあってカノンをちらりと見ると、なにか言いたげに口を開きかけて、やめた。
(・・・?)
纏う雰囲気が少し変わったようにも見えたが気のせいだろうか。
曲がりなりにも彼は神獣。カノンと叶弥について思うところがあったのかもしれないが、次の瞬間には何事もなかったかのように人好きのする笑顔に戻っていた。
「ああ~、体力消耗してるね。呼吸も浅目だし体温も高い。・・・この子、ちゃんと食事は取れてるの?」
「僕もずっと一緒にいられたわけじゃないからなんとも・・・でも、以前よりはあまり食べなくなったかな」
「ふーん。この様子だと睡眠もあまり取れてないんじゃないの?恐らく自律神経が乱れてる」
「・・・」
言われれば、元々寝付きも悪く眠りも浅かったように思う。
別の世界に行くたびに力を使い果たすカノンが、実体を保てるようになるまでは叶弥の前には姿は現せなかった上、四六時中一緒にいられたわけでもない。
「保護者、失格だな」
「保護者?君はこの子の彼氏とかじゃないの?」
「・・・そんな軽薄な間柄じゃないよ僕らは。まあ、家族みたいなものかな」
一切カノンを見ずに叶弥の様子を見ながらう~んと唸る白澤は、振り返ると不敵な笑みを浮かべていきなりこう言い放った。
「じゃあ、僕がこの子と付き合ったって問題はないわけだ」
なぜそうなる。
喜色満面、対するカノンの顔は引きつっているばかりか、拳を握りしめて今にも殴りかからんばかりの様相だ。
「君は叶弥には釣り合わないよ、何より彼女が嫌がると思うんだけどね僕は!」
「へぇぇ、家族なのにそういうとこ干渉しちゃうんだ。と言うか釣り合う釣り合わないなんて、初対面の君に何がわかるの?」
「彼女と長い付き合いの僕の目は確かだよ、君みたいに軽そうな奴なんか僕は認めない!」
病人を診るというのは一体どこへ行ったのか…。
二人共が声のボリュームが徐々に大きくなっていくのも構わず、やいのやいの文句を言い合っている。
『初対面』なのに、こうも掛け合いがうまくいく・・・というのも変な話だが、鬼灯と白澤の関係のように犬猿の仲になってしまったというのは見て取れる。
と、睨み合う二人の間に黒い影がスッと割り込んだ。