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クチナシ【鬼灯の冷徹】※不定期更新

第2章 黒と白の似たもの同士


通された客間らしき部屋は、畳が香る和風の部屋だった。
日本の地獄なんだからそりゃそうか、とカノンは頭を掻く。

敷布団に横たわる叶弥を見てため息をつく。なんで毎回こうも、彼女はトラブルばかりに見舞われるのかと。
猜疑心が強く他人には簡単に心は開かない癖に、変にお人好しで優しいというデコボコした性格の叶弥だ、今回も色々背負い込んでしまうのかもしれない。
…いや、彼女の特異な力がそうならざるを得ない状況を作り出していることはわかってはいるのだが。

一番思い出させたくない古い記憶には幾重もの鍵を施しているのだが、それも完璧とは言えない。
いつかそれが暴かれてしまうのがカノンには恐ろしくてたまらなかった。

彼女の存在理由、カノン自身の存在理由。
それ自体の基盤が実に不安定なものである故に、出来ることなら荷は軽い方が傾きにくいだろうと、世界を渡る度にそれまでの記憶に蓋をしてはやり過ごしてきたのだ。
中継地点である世界の狭間で、叶弥は毎回開放される記憶に苦痛を感じる他ない。
カノンに出来ることは限られている。そうわかった上で、毎回その手を握って立ち上がらせて送り出さないといけないのだ。

後悔を含んだ回顧をしていると、トントンと扉を叩く音がして俄に現実へと意識が引き戻される。

「ここでいいのかな~?病人がいるって聞いてきたんだけど」
(・・・来たか。叶弥に会わせたくないけど仕方がない)

おおよその人物像は現実での叶弥を通して把握しているだけに、その声の主がカノンは好きにはなれない。
非常に不本意ではあるが、関わらずにいるほうが無理というもの。
諦めるように頭を垂れながらドアを開けると、白い衣装と目尻の紅が特徴のその人が片手を上げて挨拶した。

「你好、僕は白澤って言うんだ。自己紹介もそこそこで悪いんだけど、あの性悪鬼人が言ってた病人ってどこにいるのかな?」
「・・・ああ、こっちで寝ているよ」

努めて平静を装うが、女遊びが激しい白澤のことだ。容姿問わず女と見るやとりあえず引っ掛けるイメージしか無いカノンは、いつでも叩き出せるように意識しながら一つ向こうの部屋へと案内する。

はいは~い、と軽く応えて付いていく彼は、横たわっている人物を見て驚いたように目を見開いた。
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