第1章 ああ、めんどくさい
その様子を見てクスと笑うと、やれやれとでも言いたげに肩をすくめて見せた。
「言ってなかったっけ、僕は叶弥を補佐するだけ。直接力を奮ってなにか事を起こせば、彼女のそばにはいられなくなってしまう。そういうルールだからね、何もしないよ」
宥めるようにそう言って、鬼灯の金棒をおさめさせた。
「…分かりました。叶弥…さんもそんな状態ですし、今はこれ以上追求はしません。ですが、信用したわけでもないので、暫くはこちらで監視させて貰います」
「それは、地獄に留まれってことだよね」
「言わずもがな、分かっていただける方で助かります」
お互いに腹を探るような視線を交わす中、影から二つの頭が様子を伺うように並んでいた。
唐瓜と茄子の小鬼の2人である。
閻魔大王に仕事の報告に来たのだが、運悪く鉢合わせになってしまったのだった。
異様な雰囲気に息を呑む2人。
と、白い頭に三本角の茄子が、空気を読まずに声を出す。
「病人ですかぁ?じゃあ白澤様にお薬依頼しないと」
「あっ、余計なこと言うなよ茄子!もう、この状況が嫌だったから何も言わずに隠れてたのに!」
「…ごめん、唐瓜…」
気を削がれて更に機嫌が悪くなったらしい鬼灯は、仕事は終わったのかと眉間にシワを寄せながら言うと、その仕事の終了報告だと唐瓜は言う。
「…上司部下に板挟み、君も大変みたいだね」
カノンは同情気味にそう言って、叶弥を抱え直してその髪を梳いてやる。
「まあ、やりがいはありますよ。…さて、叶弥さんが調子が良くないみたいなので、非常に不本意ではありますが白澤を呼んで診させようと思います」
「・・・お願いするよ」
カノンの笑みで、周りにいつの間にか涌いていた獄卒ギャラリーから黄色い悲鳴が上がる。
鬼灯はそれを金棒で床を砕いて脅し退散させると、懐から携帯を取り出した。
「今から直ぐに来て下さい、病人です」
「エェーなんだよ藪から棒に、ボクは今から女の子とデー「いいから早く来い白豚、さもなくば金棒の錆にするぞ」トォォォお前ぇぇぇ!!」
ブツッ ツー ツー ツー
「…鬼だ」
カノンが若干引き気味に漏らしたのだった。
(大丈夫かなぁ叶弥、変な話、他の世界より気疲れしそう…)
そんな心配をしながら叶弥をぎゅっと抱きしめた。