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クチナシ【鬼灯の冷徹】※不定期更新

第5章 助く者は


「…喜怒哀楽が激しいって言われない?叶弥ちゃん」
「言われるかもね。カノンにならしょっちゅう」

ころころと気分が変わりがちな所を指摘されたのだろう、少しだけ恥ずかしく思いながらも、今はそばにいない片割れを思い出して頬を緩めた。
神獣といえば有難がる対象の筈なのだが、白澤はどうもそんな風には見えない。
気の抜ける雰囲気に、つい絆されそうになって両頬をパチンと叩いた。

「カノン、そっちに行ってるんだよね?…元気にやってる?」
「あー、元気元気、うん…あっちは叶弥 叶弥、こっちはこっちでカノン カノン。なんか気分悪い」
「え」
「何でもないよ!じゃ、ボクは当座の目的は果たしたわけだし?遊びに行こっかなぁ〜」

なんだか私情をボヤかれた気もしたが、よく聞き取れなかったのでスルーしておいた。
それよりも、桃源郷へ行きたいという目的がある叶弥は慌てて引き止める。一番なんとかなりそうな人物をこのまま逃すわけには行かない。

「あのさ!桃源郷!白澤は桃源郷に住み着いてるんだよね!?私、そっちに行きたいんだけど!」

ガシッと腕を掴まれた白澤は目を見開くと、にやーと笑みを湛えてその手を握り返した。

「そうだなあ、連れて行ってあげてもいいんだけど」
「何でもするから!鬼灯の奴に捕まりたくないんだ!」
「捕まる?キミ、あいつのとこで働いてたんじゃなかったっけ?」
「…あれは働いてるとは言わない、奴隷みたいなもんだ!」

色々と思い出したのだろう、拳を固めて顔が引き攣っている。それを見た白澤は畳み掛けた。

「何でもするからって言ったよね?それってどういう意味かわかってる?」
「それは」
「桃源郷へ行きたいんでしょ?行くにはあの門番がいる所を通過しないといけないし、その目を掻い潜るのは大変だし。許可がない一般人のキミを連れ出すのは色々と不味いんだよねぇ、リスクにあったリターンがないと、さすがのボクもうんとは言えないなぁ」

乱れた化粧を丁寧に指で扱いて取っていく。
擦りすぎて赤くなってしまったが、化粧の下に隠された素顔を見て、やっぱりなあと言った。
自覚がないが、叶弥の顔は整っているのだ。
普段の振る舞いのせいであまり気づかれないが、その表情や視線が見た者の心を擽る不思議な魅力を持っている。
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