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クチナシ【鬼灯の冷徹】※不定期更新

第1章 ああ、めんどくさい


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「さらに言うならカノンは男だー!」

ますます見開かれる三白眼。怖い。
最早理解なんぞされなくていい、早くここから逃げ出したい!

「スパイでもなく亡者でもない。更に自分達を異世界の人間だと言い、片方は神崩れですか。…全く、茶番にも程があります。面倒ですね、その辺の柱にでも繋いでおきなさい」

「お、鬼……!」

私が知っている(と言ってもネットとかで見た簡単なキャラ設定だけだが)鬼灯に、更に輪をかけた鬼畜じゃないか、というか変態の域じゃないのか。
あっという間に柱にぐるぐると縛られて身動きが取れなくなると、鬼灯は見向きもせずに去っていってしまった。

「ご、ごめんね、話をきちんと聞いてあげたいんだけど…ほら、鬼灯君ああだから…」

そう申し訳なく話すのは、鬼灯の上司である閻魔大王だ。
本当になっさけない上司だな。完全に尻に敷かれてるじゃん。
内心悪態をつくと、私の後ろに縛られているカノンがクスクスと笑い出した。

「叶弥、もう少し大人しくしてようか。いくら知っている物語とはいえ、ほんのさわりぐらいしか分からないんでしょ?様子を探ってからで大丈夫だよ、きっと」

目の端にちらつく、カノンの柔らかそうなプラチナブロンドの髪に昂っていた気持ちも幾分か治まるようだ。全く、頼りになる「神様」だなぁ。
つ…とカノンの指が気遣うように触れて嬉しくなる。
分かったと答える代わりに、その指を小指で握り返した。


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「この状況でイチャつくなんていい神経してますね」

鬼灯の目にはそう見えたらしい、閻魔大王が苦笑いしてまあまあと宥めるも、彼女達の出自が分からぬままでは何も出来ないと、色々調べていたのだ。
だが一向に情報は出てこない。

「現世のリストにもいない、天国地獄ともに該当者なし。…どういうことですかね」
「彼女たちの言うことが嘘じゃないって事じゃないの?」

だが、前例のない事を適当に処理するわけにはいかないと鬼灯は返す。何だかんだで真面目に地獄の事を考えているのだ。

「…まあ全く縁はなさそうですが、念のためエジプト冥界とEU地獄にも情報照会してもらいましょうか」

全く、仕事ばかり増えますね。そう悪態をついて柱を見上げてため息をついたのであった。
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