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クチナシ【鬼灯の冷徹】※不定期更新

第4章 異質な存在


カノンが来て以来、作業こそ楽にはなったが、気苦労が何倍にもなった感じだ。
桃太郎はこんなふうに、1日幾度かぶつかり合う2人を仲裁しなければいけないのだから、実際心労が溜まっていても不思議ではなかったりもする。

カノンは白澤や鬼灯のようなタイプとはまた違った、やや彫りの深い顔立ちをした美青年だ。
白澤を訪ねてきた女達が、度々運悪く彼を見つけて白澤をそっちのけでキャアキャア言うものだから、それも気に入らないらしい。
そういった場面だと、カノン本人は当たり障りなくあしらうのでトラブルにはならないのだが、白澤が絡むと実に面倒くさい事になるのだった。

「そろそろ君達の目的を教えてくれてもいいんじゃないの?いい加減監視役から解放されたいんだけど」

それを聞いたカノンは押し黙る。
掻い摘んで話はしたが、果たしてどこまで分かっているのか。
この口ぶりだと、どうも信用されていないのではと苦い顔をした。

「前に言った通りだよ。叶弥は世界を渡る能力がある。それは故意に使えなくてあちら側からの干渉で、つまり何らかの召喚技術が働いて初めて移動が出来るんだ。目的も何も無い。受動的だからね」

それは本当であり、嘘も含まれた返答だった。
カノンはこれ以上事細かに話す必要は無いと判断したからだ。
叶弥を他人の過干渉から守る為でもあり、カノン自身を守る為でもあった。

「僕だって元の世界へ返してあげたいよ。だけど、彼女は理から外れた運命を辿ってしまっている、多分ね。だから元の世界へ戻っても、叶弥の居場所はもう無いんだ」
「なんだか可哀想ですね…」
「他言無用だよ、桃太郎君」
「わかってますよ」

白澤はふぅん、とだけ漏らすと、それ以上興味がなさそうにくるりと踵をかえす。

「まあいいや。桃タロー君、僕は出掛けてくるから後は任せたよ」
「あれ、どこへ行くんですか?」
「んふふ、コ、レ」
「…またですか」

小指を立ててイヤらしい笑いを向ける店の主人に、桃太郎は今日何度目かのため息を漏らした。
カノンと言えば、白澤から目的を聞いてきた癖に、急に態度を変えてこの有様だ。全く彼の頭の中身はどうなっているんだと桃太郎に耳打ちしたが、彼は苦笑いを浮かべるだけだった。
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