第2章 黒と白の似たもの同士
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「お前、叶弥ちゃんにもその金棒押し付けただろ」
「…彼女には悪いことをしました」
部屋を出た少し先の廊下で立ち止まって話をする2人。
イマイチ信用できないのは変わらないのだが、鬼灯からしたら叶弥達が言うことがチンプンカンプンな上、妙な雰囲気を纏っていて警戒せざるを得ないのだ。
白澤も言いたいことは分かる。しかし元来の性格が先に鎌首をもたげてしまい、そういう詮索をする気がどこかへ行ってしまった。
癖なのだ。女の子を見ると、ついああやって構いたくなる。
それが彼氏でもない“家族”が親密に絡む様子を見ると、それをつついて壊したくなる衝動に狩られるのだ。
「まあ僕からしたら、あのカノンって奴の方がずっときな臭いけどね」
鬼灯は黙って返事はしない。
その代わりに妙な事を言い出したのだ。
「叶弥さん、あの人は調教しがいがありそうですね」
「…は?言うに事欠いてそれ?君、僕のこと散々非難してきたけど、今の発言は聞き捨てならないな。君の方がよっぽど変態だよ」
明らかに引いている白澤に構わず、鬼灯は自論を展開し始める。
「初対面で私をお前発言したのは彼女が初めてですよ。しかも私の金棒グリグリを受けながらも、割と平気で居直ってましたし。あんな風に突っかかられるとますます虐めたくなります」
真顔、いや鉄面皮にも宿る嬉々として饒舌に語る鬼灯に、白澤は、気持ち悪、と呟いて、鬼灯から金棒の追撃を受けるのだった。
「それにまあ、監視がてら雑用でもしてもらえば言い訳ですし」
それに、と一呼吸置いて白澤を見る。
「…あなたがきな臭いと言っていたカノンさんを引き離して、色々探るいい機会だと思いますよ」
言うことはさておき、やはり食えぬ男だと脳裏で呟く。
「で?カノンをどうするつもりなのさ…まさか、僕に面倒をみろとかそんなんじゃ「淫獣の癖にイイ勘してますね、色々理由をつけて引き離すので、適当に長く居座ってもらっててください」って、人の話を聞けェェェェ!!」
白澤の悲痛な叫びが廊下に響き渡った。
続いて、金棒がめり込む音が聞こえた。
遠く離れた閻魔大王の耳に届くと、盛大にため息を吐くのであった。
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「ねー、カノン。なんか聞こえたんだけど」
「ああ、蛙が潰れた音じゃないかな?」