第6章 調教の成果(邪魔された)
「お近づきの印に…」
さっと差し出したそれは、
「お蕎麦…ですか?」
高級そうな箱に詰められたそば束。
「…?皆こうして、挨拶をするのではないのですか?」
「え、えと…」
頭が良さそうに見える方だけど、世間知らず?
夜行列車でわざわざ土産物を持って挨拶なんて、常識的じゃないなぁ。
律儀そうな男性は、つまらないものですが、と付けたし、私はたじたじ。
受け取らずにいると、ずいっと前に押し出すものだから
「あ、ありがとうございます」
反射的に受け取ってしまうのが人情。
おそらく断られるという考えがあの方にはないのだろう。
「そういえば、靴が沢山ありますね。
団体の方は、もっと広いお部屋では?」