第1章 春
入学式後のホームルームが終わり、帰ろうとしたとき。
『ねぇねぇ』
一人の女子に呼び止められた。
『藤瀧萌衣さんでしょ?わたし、岡田かえで。同じクラスだよね、よろしくね♪』
『…よろしく…』
何だか違和感を感じながら、あいさつした。
『ところで、藤瀧萌衣さんって、二年生の渋谷すばる先輩と知り合いなんでしょ?』
…あー、やっぱりそうだよね…わたしと友達になりたいんじゃなくて、すばるくんのファン、なんだよね…
本当にわたしと友達になりたいっていって親友になった子達もいるし、本当に7人のうちの誰かの事を好きでいてくれて、本気で紹介してほしいと頼んでくれる子には、ちゃんと紹介もするけど(それで上手くいったこともある)。
でも、たまーにアイドルのファンみたいにただキャーキャー言って、紹介してって言われたから紹介しただけなのに、実際の性格を知ったとたん『こんなはずじゃなかった!』と大騒ぎされることもあるから(それで傷つくのは7人だから)、あまりそういう人とは仲良くしないようにしてる。
だから、今回も思わず
『渋谷先輩のことは、よく知らないんだよね…』
と言ってしまった…
でも、岡田さんはめげずに
『でも、みんなが言ってたよ、藤瀧萌衣さんって2組の安田君とか3組の錦戸君とすごく仲がいいって。この間、わたし、安田君と錦戸君と渋谷先輩が一緒にコンビニでマンガを立ち読みしてたの見たもん。』
と食いついてきた。
…どうしよう…正直、ぐいぐい来る女子って、すばるくんは苦手なんだよね…
上手く切り返せないで困ってると、上の方から
『あー、やっとめーちゃん見つけたぁ♪』
『みんな待っとんで?早よ行こ?あれ?この子誰?』
という声。
振り返ると、たつとマルちゃんが迎えに来てくれた。
『あ、同じクラスの…』
『岡田かえでです。…じゃ、わたし、帰るねー♪じゃあね、めーちゃん♪』
…岡田さんは去っていった。
『何なん?あの子?』
たつとマルちゃんは首をかしげる。
『大きな声じゃ言えないけど…すばるくんのファンみたい…』
思わず二人に言ってしまった…
『あー、そーゆーことか』
『どうせ、またすばるくんのおじいちゃんキャラを知ったとたん、こんなはずじゃなかった…て言われるんやろ?』
そーなんだよね…それがなければ、紹介するんだけど…何かやだな、こーゆーの。
